近くて遠い国:北朝鮮情報

 2001年6月、190ヶ国目となる北朝鮮を訪れました。北朝鮮は「日本人拉致問題」や「食糧不足」などでまず取り上げられるので、良いイメージを持っている日本人は少ないでしょう。北朝鮮は実際にどんな国なのか?当然これが知りたいところですが、短いツアーでの訪問では分かるはずもない。ただ食料に関しては「今年はさほど深刻なことにはなっていないのではないか…」などと緑の田畑を見ながら思った。ところが、韓国に戻ったすぐそのあとで“旱魃”のニュースを見た。やはり何も分かっていない…とほほ。
 短い滞在で興味が湧き、「分からない」ままで終わりたくなく、一月ほどのちに、中朝国境地帯をゆっくり旅しました。それでも分からないことばかりですが…。

入国方法=ツアー

一般のツアー

 個人で自由旅行をするのは不可能。したがって、入国にはツアーに参加が普通。旅行会社の店頭などで得られるパンフレットを探しても普通はないが、以前から日本人向けツアーは専門旅行社で催行されていた。2000年以降は大手の一般旅行社などでも催行できるようになったが、まだまだ専門の会社の方が信頼できる。増えていなければ、専門の会社は2社のみ。(仕入れ先は同じなので旅行内容はほぼ同じ。)
 リンクを付けないので、検索してください。旅行に参加した人の旅行記もたくさん出てくるはず。それらを読むとほとんどの人が満足してるのが分かるでしょう。またリピーターが多いことからもツアーの質が良いことがうかがえる。その国で最高級のホテルに泊まり、ガイド(監視員だけど)が常にケアをしてくれるツアーなんて、他の国に照らし合わせたら超VIPツアー。だから高めの値段も仕方ない?他の国では決して見られないものがたくさん見られる、これを面白いと思うかつまらないと感じるかは・・・

 私自身はこのような普通の日本人向けツアーに参加したわけではないので念の為。

中国発のツアー

 日本発のツアーが高いので、昔からある中国発のツアーをインターネットで調べたところ幾つか出てきたが、日本発とさして値段は変わらない。(4日間1600US$、マスゲームはオプションで100$など)
 実際に中国のハルピン、図們、延吉、集安で募集しているのを見ました。確認したところでは、
図們発の一日ツアー:本年(2001)からで毎日催行とあったが、参加者がおらず連日ツアーキャンセル。日本人の参加OK(韓国籍はダメ)
というのがあった。聞いた話では、中国人料金と外国人料金があり、外国人料金はバカ高いとか。北朝鮮側が設定した料金なので、外国人料金の値引きは不可。

 ビザ取得まで時間がかかる可能性があるので、時間のある人以外は現地申しこみは難しい。正式入国なので中国に戻るためのビザも必要となる(未確認)。

韓国発のツアー

 私は、韓国からクルーズ船で行く金剛山ツアーに参加しました。唯一の韓国人用ツアー(上記ツアーは韓国人は参加できない)だったのですが、現在は中止されている。豪華クルーズ船は売却されてしまったが、ソクチョからのツアーに衣替えして続いている。(NOV01)
 このツアーに関しては、「現代(HYUNDAI)グループが将来をにらみ、北朝鮮に莫大な権利金を支払った上で、韓国人なら一度は行きたいとあこがれる金剛山の観光開発独占権を得た」などと批判的な報道がなされ、その2年後、「思ったように集客出来ず、現代グループを傾かせ、中止へ追いこまれつつある。」との報道があった。
 私自身上記報道をうのみにしていたが、参加してみてこのツアーの真意は全く違うところにあると確信。政治的な問題が含まれるので、ここでは特に書かないが、私は、採算など度外視、他で得た資金をつぎ込んでこの事業を始めた故前会長を非常に尊敬するようになりました。少なくとも参加者(韓国人)の目的は金剛山観光よりも北朝鮮入国、そして北の人(たとえそれが監視員のみであっても)との交流にあったよう。

 来夏のシーズンから、船ではなく陸路で金剛山を訪れるツアーに衣替えして再開される予定。南北を分断している休戦ラインについに穴があく!
 2003年11月追記:2003年9月本当に陸路ツアーが開始されたもよう。現代グループは資金難に陥り、韓国政府の援助を受け、舗装予定の道も未舗装のまま、なんとか開始にこじつけた陸路ツアーらしいが、今のところは大人気とか。ツアー代金は2泊3日で3万5千円程度だそう。どなたか参加をして感想を教えてください。

覗くだけなら

 ツアーが苦手、高すぎる、韓国籍などの事情で、ツアーに参加できないが…という方は、国境を挟んで眺めるというのはいかがでしょう?

韓国側より

 国連が管理する板門店へのツアーは有名。事前予約要。革靴など服装にうるさい。
 他に韓国内から北を眺めるための展望台が2ヶ所ある。しかし、休戦ラインの両側に幅広い緩衝地帯があり、それを超えて眺めるので遠い!望遠鏡でやっと人が確認できる距離。北朝鮮を覗くというより休戦ラインを覗いている感じがする。
 ソウルの北にあるのがオドゥ山展望台。ここに私は訪れた。

中国側より

 お勧めなのが中国サイドから覗くこと。図們、集安、丹東が有名である。この3ヶ所からは国境の川に観光船あり。しかし、このような観光設備の整った場所では北朝鮮側も構えているのか、よく見えない。観光バスが来る場所から1キロ離れればよく見える。出来れば隣村まで行くのが良い。また当然川の上流の方が幅は狭く、対岸がよく見える。北の人と話も出来る距離。お勧めは長白県。

通貨

 通貨はウォン。もちろん南のウォンとは別物。公定レートは1ウォン=2US$くらいとか。中国側の観光地ではウォンを土産として販売している。1ウォン=1元(つまり16ウォン=2US$)くらいのところが多いが、仕入れ元らしき店では新札の全セット(1〜100ウォン)で18元。と言うことはブラックマーケット(実質レート)は公定の100倍を越えているのか?中国側の町で闇両替屋が見つかると聞いていたが、結局見かけず。

 金剛山ツアーではなんと使用通貨がUS$。国内で北のウォンを見ることは出来なかった。

見所

 なんと言っても世界で最後に残されたガチガチの共産主義国家。前世紀のシステムとして歴史に埋もれてしまいそうなこの社会体制を感じることが出来るのがこの国!中国やキューバではもう共産主義らしさが…。

金剛山ツアー

 入国が困難な韓国人の人向けツアーなので、特に現地ローカルとの隔離が厳しい。 なんと道路も現代グループが作ったもので、金網が張られている。横断は地元民も可能だが、この道路さえ通ることは出来ないようだった。平行して未舗装道路がある場所もあり。
 行く先々に監視員が大勢いる。女性は美人ばかり、顔で選考しているのか?監視員の写真撮影禁止が残念。当然話が出来る北の人は監視員しかいないが、他の参加者がコリアンを話すのだから、言葉の通じない私にはほとんど会話のチャンスがない。話しかけてもらったので、少しは話はしたが…。

金剛山 金剛山・・・残念ながら天気が悪かったが、渓谷、絶壁、滝などなど良い山。韓国の雪岳山とは比べ物にならない名山である。

海金剛 海金剛・・・景色の良い磯。裏側には軍の基地があった。知らずにそちらの写真を撮ったら韓国側のガイドにえらく怒られた。北の監視員の人がもっとそばで見ていてなにも言わなかったのに…、過剰反応。海側には鉄条網があり出入りの管理が厳しい。(ちなみに韓国の海岸も金網は延々と張ってます、休戦してるだけで戦争が終わったわけじゃない!)

サミルポ湖 サミルポ湖・・・ここも景色の良い湖。しかし、初めてここで農村をゆっくり遠望できたのでその印象が強い。また同じグループとなった人々の努力で、この近くで監視員との歌の交換会が行われた。南北交流の姿を目にし感動。

民家 農村・・・農村などまったく見れないかと心配していたが、移動中金網の向うではあるがたくさん見ることが出来た。写真撮影禁止なのだがつい…。農作業はグループごとに共同で行われている。

 オプショナルツアーのモランボンサーカスも面白かった。上海雑技団より断然うまい。
 船内での毎晩行われるショーもバイキングの食事もGOOD。贅沢なツアーでした。

中国側より

 金網にさえぎられた金剛山地区を訪れ、「北朝鮮のシステムはすごい」と思ったが、中国側との国境地帯は、監視の目さえほとんどなく、自由に行き来できそうな感じ。実際に密入国者がかなりいると思われる。
 韓国人ツアーが大勢来ていたが、彼らが団体で訪れるような場所にだけ対岸が見にくくなっているのはなんなんだ?ちょっと歩けば見えるのに。話さえ簡単に出来る。そしてこの団体が来る場所には、北の切手や紙幣など色々土産物が並んでいるのであった。
 北側は山の急斜面にまで畑がびっしり広がり、またビルの外壁がコンクリートむき出しなのが特徴的。どこも市内バスのようなものはなく、通勤通学にもくもくと隣村へ歩く人が多い。
 観光客を見ると手招きする人が多いのは、そのように教育されているから?歌を歌いながら行進する軍隊も見かけた。朝夕には中国の町に響くほどの音楽を流している町も…。やはり我々の常識とは少し違うものがあるのか?

 北側を見るに一番良い場所は長白。ここは川幅が狭くすぐ対岸が町である。

個々の見所は写真館・北朝鮮2(中国から覗いた北朝鮮編)をごらんください。

感想など

 一番安い北朝鮮ツアーだとチェックしていた金剛山ツアーが終了すると聞き、あわてて最後に近い(2番目?)出発日に申し込んだ。ツアーには期待しておらず、残り訪問国を減らすだけになりそうだと心配していたが、予想外に楽しく、また色々と考えさせられることもあり、収穫の多いツアーであった。北朝鮮への興味が訪問によって増してきて、中国側から覗く旅をしたことは最初にも書いた通り。
 私達の船はこの航海が最後のツアー、スタッフも大勢上陸していたのが印象的。(ガイド達は金剛山で写真とりまくり、大騒ぎしていた。)
 ぜひまた訪れたい国ですね。

NOV03/NOV01追記、OCT2001記


Top Page,フレーム復帰