ラグマン、拌面(バンミェン、ban4mian4)、拉面(ラーミェン、la1mian4) ...中国新彊
代表的ウイグル料理。野菜多数と肉のトマト炒めをコシのある手延べ麺に和えた料理です。「ラグマン、拌面、拉面」だと使う肉は何でも良く、「过油肉(グイユルー)拌面/拉面、グイルーラグマン」としたときには必ず羊肉、更に肉が小さい場合には「碎肉(スイルー)拌面/拉面、スイルーラグマン」となるんです。勉強になるわ~。ナスたっぷりの茄子肉(チエズルー)拌面/拉面も好き!
ポロウ、グアファン、抓饭(zhua1fan4、ジュアファン) ...中国新彊
羊肉とにんじんを多めの油で炒め、続いて米も入れて炒めてから、水を加えて炊き上げます。中央アジアやアフガニスタンにも同じ素材で同じ味の料理があり、味付けが変わればスペインのパエージャ(パエリア)も同じルーツの料理と言える。新疆では入れる野菜はにんじんが一般的で、ポロウ全体が色づき、甘みが出ています。
杂碎(ゾースイ、za2sui4) ...中国新彊
ウイグル語でゾースイ、中国語でも杂碎。ひたすら脂ばかりの臓物ミックスです。黄色い脂肪、脂の乗った大腸、大腸に詰め物をしたものetcのごった煮は「家畜のどんな部位も無駄にしない」という遊牧民たる性格を示しています。しかし実に日本の雑炊のような名前です。きっとどこかの歴史の中でつながりがあることを期待し、これからも食文化探求を続ける楽しみとすることにします。
チュチュレ ...中国新彊
チュチュレは、ロシア語でペリメニ、ウズベキスタンでチュチュワラ、中国語で馄饨(フントゥン)、日本語でワンタン。私が支持しているのは「耳カイロ」として生まれた中国発祥説。チュチュレの包み方を教えてくれたウイグル人おばさんがチュチュレを耳に当てて「ほら耳の形に包むのよ」と言ったのが印象的。写真は肉野菜トマト煮をかけた「グイルチュチュレ」です(グイル=大きめカット肉)。
カワプ、烤肉(カオルー、kao3rou4) ...中国新彊
トルコ圏、ペルシャ圏、ソ連圏、アラブ圏と、世界に広く存在する肉の串焼き、いわゆるケバブです。ラーザ(唐辛子)、ズラ(クミン)、塩がウイグル流味付けです。クミンはここではズラでインドでジラと呼ばれる、食文化は繋がっているんだなーと感慨深いです。この世界旅では4年かけて4度新疆ウイグル自治区に行っていますが、ビールを出すイスラム教徒の店が激増したと実感。
大盘鸡(ターペンジ)、小盘鸡(シャオペンジ) ...中国新彊
大きな平皿に、鶏肉やじゃがいもピーマンの醤油と香辛料煮込みをどーんと乗せたもの。「食事を残す文化」のある漢族(中国人の主要民族)は大盘鸡(ターペンジ)を注文し、食事を残さないウイグル人などは小盘鸡(シャオペンジ)を注文するそうです。写真は私たち2人で食べるための小盘鸡です。レンゲと比較するとそれでも大皿!!というのが分かるでしょう。味は良いですよ~。
モモ、セイ ...中国新彊
ウイグル料理で「モモ」と言えば、中国の馒头(マントウ)または花卷(フアジュアン)、つまり肉まんの皮の部分だけをふかしたもの。チベットやネパールだと同じ名前でもシュウマイ(つまり具入り)タイプの料理になるから、その違いが興味深いです。一方「セイ」とは、ラグマンの麺にかけられるような野菜のトマト煮込み。2つをまとめて「モモセイ」という料理で提供してくれます。
グシュナン ...中国新彊
グシュ=肉、ナン=薄いパン。グシュはアフガニスタンのグーシュトゥやハンガリーのグヤーシュ然り(どちらも肉の煮物のこと)、世界で広く「肉料理」に使われる言葉です。グシュナンは麺生地を丸く伸ばしたもの2枚に羊ひき肉とねぎを詰めて揚げたもの。英語のできるウイグル人は「Uygur Pizza!」(ウイグルピザだよ)と言います。味はかなりモンゴルのホーショールですね(≫
こちら)。
グシュマンタ ...中国新彊
グシュ=肉、マンタ=小麦粉の皮で包んだもの。グシュはアフガニスタンのグーシュトゥやハンガリーのグヤーシュ然り(どちらも肉の煮物のこと)、世界で広く「肉料理」に使われる言葉です。写真はねぎたっぷりの肉まんです。新疆ウイグルは中国の調味料に完全浸透を受けていますから、辣椒(ラージャオ、唐辛子たっぷり辣油)や黒酢でいただきます。
丸子汤(ワンザタン) ...中国新彊
丸子は肉団子のことですから、これは肉団子や野菜を入れたごった煮です。きのこも青菜も入っていて、醤油の風味が最高、美味しかったなー。
小麦粉の皮で何かを包んで揚げるサモサは、東は中国から西はアフリカ大陸まで広域に浸透しています。新疆ウイグル自治区で食べるサモサは、カリっとしたパン生地に羊肉と玉ねぎのとろとろ炒めがたっぷり入っており、中身のしっとり加減に感激しました。
新疆ウイグル自治区に行ったら、この美味しい紋様の入った円盤状パンをどうぞ。ケバブやスープ類と一緒にいただくと美味しいです。中央アジア諸国と共通する円盤状パンですが、新疆では、お店によっては、これにラーザ(唐辛子)やズラ(クミン)などの粉をふりかけて木炭で炙り、美味しいものを提供してくれます。
サランドゥー、サランドゥーグまたはドガップ ...中国新彊
ドゥーまたはドゥーグとは、ウイグルからトルコ付近までユーラシア大陸一連に根付く発酵乳(アイラン)のこと。ウイグルにも遊牧民の文化と乳製品の使用が残っています。本来の発酵乳と異なり砂糖の入ったかき氷仕立ての物(写真はそれを混ぜるパフォーマンス)は、彼らの伝統食とはかけ離れているから、「キチガイの発酵乳」という意味で「サランドゥー」と呼ばれます。
葡萄は新彊ウイグルトルファンの象徴。こういうドライフルーツの数々は、中央アジア諸国のバザールをも彷彿とさせる、ここはそういう意味で広く「トルキスタン」(中央アジア一帯を呼ぶ言葉)の一角なのだなあと、大陸を伝わる文化の連続性を思うのです。
パキスタンで美味しいカレーに出会え、幸せです。カリー(≫
こちら)やコルマ(≫
こちら)よりもよりスパイシーな、パキスタンの魅力溢れるカレーです。写真はチキンカライなのですが、鶏肉を使うときは野菜の水分だけ、水を加えずに作る、それほど旨みがぎゅっと詰まっているのです。色も濃いよね。Kadaiはウルドゥ語、Kalahi(Karahi)は英語、調理に使う浅い鉄鍋のことらしい。
豆を使ったカレーです。イスラム教徒が多いパキスタンでは菜食主義者が少なくて肉好きの方が多いのですが、そのかわり、宗教上「食肉とされるときに所定の祈りを捧げられ、所定の捌きかたをされた肉」でないとハラルミート(食べていい肉)にならない。そんな肉がないときなどは、ダールは強い味方です。
パキスタンでは、「カリーは水分が多くて香辛料マイルド」、「コルマはとろみがあってスパイシー」、「カライはもっとスパイシー」というような認識でいる人が多い。写真は、ビーフカリーです。この店では味出しにトマトをよーく油炒めしているので、赤い色をしています。
パキスタンでは、「カリーは水分が多くて香辛料マイルド」、「コルマはとろみがあってスパイシー」、「カライはもっとスパイシー」というような認識でいる人が多い。写真は、コルマの中では水分が多くてしゃぱしゃぱしていましたが、店主曰く「コルマ用のマサラ(ブレンド香辛料)を使っているのでこれはカリーではなくコルマ」とのお話でした。
パキスタンでは、「カリーは水分が多くマイルドで、コルマは水分が少なくスパイシー」という認識が多いなか、そういう尺度を外れて、「野菜だけの煮込み」は味付けにかかわらず「サブジ」と言います。ほうれんそうを主体とした緑色のサブジや、大根のサブジ、野菜数種類を使った「ミックスサブジ」などがあります。肉類はやはり値段が高いので、サブジは庶民の強い味方なのです。
キーマまたはキーマカリー ...パキスタン
ひき肉を使った煮込み料理、キーマと言います。マサラ(ブレンド香辛料)を使うので、日本人はキーマカレーと言いますね、パキスタン人もキーマカリーと呼ぶ人もいます。菜食主義者の多いヒンドゥー教・インドでは野菜みじん切りを使ったキーマカリーも多いけれど、イスラム教・パキスタンではみなさん肉好きなので、キーマはひき肉カレーです。
グーシュトゥは「肉」という意味。肉を使えばグーシュトゥと言うことができますが、コルママサラ(香辛料)を使うと、例えばマトンコルマといったように独自の名称がついてしまうので、私が出会ったグーシュトゥは香辛料抜きの、油、トマト、玉ねぎ、塩の、彼らの基本調味料といえる味付けで煮込まれた物が多かったです。アフガニスタンのグーシュトゥ(≫
こちら)によく似てる。
スィクケバブ(奥)、チキンティッカ(手前) ...パキスタン
ケバブは串(スィク)に肉(牛肉やマトン)を刺して炙り焼きにしたものです。チキンティッカは鶏肉を香辛料(ティッカマサラ、通常赤い)に漬け込んで串焼きにしたもの。パキスタンでは骨つき鶏肉で問題なしです。なお「スィク教徒」(インドでターバンを巻いた人)のスィクとは発音が違うので、厳密に使い分けるときは、ケバブのほうを「スィークケバブ」と伸ばし気味に発音すると完璧です。
ダウドまたはダウロ ...パキスタン
アフガニスタンのオシュ(≫
こちら)や、イランのアシュ(≫
こちら)と同じもの。イラン-アフガン-パキスタンと並ぶラインに同じ料理があるのですね。スープに具と麺(最近は輸入スパゲティー使用)を入れて調理した「煮込み麺」です。ダウド(ダウロ)は北部フンザ地方の呼称で、首都イスラマバードでは英語で「ヌードルスープ」としてファストフード的人気があるのだそうです。
私はビリヤニはペルシャ発祥説支持派、つまり、アフガニスタン方面からアジアの交通動脈にてパキスタン、インドへと伝わったという説です。パキスタンのビリヤニは必ず肉入りで(沿岸部では魚もあるらしい)、スパイスは粉だけでなく粒も入れるスパイシーさが身上。さらに、肉と米を途中まで別鍋で調理し、最後に層に重ねて仕上げるなど、技巧の細かさが美味しさに表れています。
マイルドに香辛料を抑えた炊き込みご飯。肉はあってもなくてもいいのですが、肉が入ると別途紹介するビリヤニ(≫
こちら)と区別が難しいことがあります。ビリヤニと違う点は、肉と米は一緒に炊き込み、香辛料を控えめにしている、という人が多いです。
チャワルは、パキスタンの米料理の中で最もシンプルなもの。ただ水で炊いただけの白米のこともあるし、玉ねぎの油炒めを作ってから米と水を加えて炊き込みご飯にしたものもありますし(写真がそれです)、マサラ(香辛料パウダーミックス)を加えて、まるでドライカレーのように炊き上げたチャワルもあります。チャワルはウルドゥ語(公用語)で米という意味です。
チャパティ(左)、ナン(右) ...パキスタン
チャパティは鉄板の上で薄く焼いたシンプルパンで、ナンはイーストや塩、卵などが入りタンドール(釜)焼きにしたもの、とよく言われます。でもナンを鉄板で焼いたりすることもあるし、更には「ロティ」という、チャパティと同義のようで、チャパティやナンの総称的に使われたりする用語もあります。人々の暮らしに密着するこのテのパンは、それだけに人それぞれの定義があるようです。
ブルスシャピック ...パキスタン
これはパキスタン北部、フンザの伝統料理です。ブルス=白チーズ、シャピック=チャパティ、薄焼きクレープ状パン。チャパティに白チーズに玉ねぎやミントのみじん切りを混ぜたものを乗せ、チャパティを重ね、アプリコットオイルを塗り、チャパティを重ね、白チーズハーブミックスを乗せ・・・と繰り返してミルフィーユ状にしたものです。これは非常に美味で優雅で、おすすめです。
ヤクニまたはヤフニ ...パキスタン
シンプルなスープを、ヤクニまたはヤフニと言います。写真は鶏のゆで汁やにんにく、玉ねぎをベースに作った美味しいスープです。
フンザウォーター ...パキスタン
桑の実を使って作る代表的密造酒です。イスラム教徒にもお酒を飲む人もいるものですね。むしろこういう美味しいお酒が、いかに彼らに愛されているかを伺い知ることができますね。フンザは今回私たちが訪問した、パキスタン北部のカシミール地方の名称です。泡盛のような、クセのない中にコクのあるような、旨い酒でした。
молоко(モロコ) ...キルギス
「遊牧民の獣乳変化・第1弾!」(全文は≫
こちら)
第1弾の「モロコ」は、そのものずばり生乳。結構油分が多くて、通常は、カイマック(≫
こちら)を取ってから普通にミルクとして飲んだりします。遊牧民文化の基本的飲料ですね!
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каймак(カイマック) ...キルギス
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「遊牧民の獣乳変化・第2弾!」(全文は≫
こちら)
「カイマック」は、第1弾の「モロコ」(≫
こちら)を、少し温めてから遠心分離にかけ、上層脂肪分を取り出したものです。とれたてのバターはほっぺたが落ちるくらいに美味しくて最高!!カイマックを取った残りの部分(脱脂乳)は、次は発酵に使われます。
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「遊牧民の獣乳変化・第3弾!」(全文は≫
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第2弾の「カイマック」(≫
こちら)を取った後の脱脂乳を放置すると「アイラン」という酸乳(ヨーグルト)になります。アイランはキルギスでは「脱脂乳のヨーグルト」でも、他国では「水きりまたは脱水ヨーグルトに水か湯を足して戻したもの」となる地域が多い。
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「遊牧民の獣乳変化・第4弾!」(全文は≫
こちら)
第3弾の「アイラン」(≫
こちら)を、袋に入れて数日間水切りをした、カッテージチーズ状のヨーグルトです。酸味がさわやかで美味しくて、そのままつまんだりパンと一緒に食べたりもします。次なる「クルタ」(≫
こちら)の材料でもあります。
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курта(クルタ) ...キルギス
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「遊牧民の獣乳変化・第5弾!」(全文は≫
こちら)
第4弾の「スズム」(≫
こちら)をまるめて風乾させたものです。塩を入れることもあります。行動食にもなり、携帯にも便利ですが、一番の目的は「保存食」。夏の子育ての生乳が採れる時期にクルタをたくさん作り、冬を乗り切ります。
кымыз(クムズ) ...キルギス
モンゴル-カザフスタン-キルギスには、遊牧民文化の一連の相同性があると思います。これらの国では「馬乳酒」は大変ポピュラーな飲み物です。馬の乳を発酵させたもので、微量ですがアルコール分も含まれるとされています。ほのかに苦味があります。
дындама(ドゥンダマ) ...キルギス
ドゥンダマは、キルギスではよく作られる「肉や野菜の蒸し煮」です。丸キャベツは芯つきのままざっくりと切り(放射状に16等分くらいに切る)、じゃがいもや肉、その他の野菜などを大きくきった物を鍋に入れ、水と調味料を入れてフタをして強火で水気がなくなるまで加熱して作ります。水分が飛ぶので野菜の甘みと旨みが凝縮され、これは美味しい~!!
вешбармак(ベシュパルマク) ...キルギス
ベシュパルマクはカザフスタンの国民食として有名ですが(≫
こちら)、カザフとキルギスの文化相同性は高く、よって、キルギスでも筆頭の「その土地の食」となります。ベシュパルマクの大雑把な定義は「肉のゆで汁で平麺を調理したもの」。写真はゆで鶏ときしめん風の平たい手打ち麺を、調味料と共に和えたものです。
гуляш(グリヤシュ) ...キルギス
「トルコ」って今のトルコ共和国だけじゃない。「本当のトルコ」は中国・モンゴルの地域で生まれ、ユーラシア広域を支配した。ゴリヤシュはそのトルコ圏一帯に広まる「肉の炒め物」です。ロシアがソ連圏に広め、オスマントルコが西に広め、あるいはモンゴルがユーラシア中に広め、世界に広くゴリヤシュ/グラーシュが存在します。写真はフライドポテト、鶏肉、マカロニの炒め和え。
чучбара(チュチュワラ) ...キルギス
中国のワンタンは、新疆ウイグル自治区でチュチュレになり、キルギスではチュチュワラ。ロシアから東欧、コーカサス諸国ではペリメニとして、実に広域に存在しています。写真は他の国のチュチュワラ/ペリメニよりは一回り大きく、スープ仕立てとなって登場。牛肉ミンチ入りワンタンスープでした。
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