リビア情報 謎の国リビアはいかなる国か!


 2000年2月、ようやくリビアに訪れる事が出来た。ビザ取得が難しく、ほとんど情報のないまま、ずいぶんと心配して入国したのであるが…。

 2月になって英語のガイドブックであるロンリープラネッツが出た。そのため個人旅行者向けの情報が皆無という状況は既に脱したが、日本語の情報はまだまだ少ないと思います。
(ロンリープラネッツは中東編にリビアが含まれた。93年発行の北アフリカ編にもリビアが含まれており、これが絶版になってからの数年間が、ガイドブック情報がなかったのだ。ちょうどその時に当ってしまった…。アフリカ編にはほとんど書かれていない。)
 なおトリポリの日本大使館で、リビア情報なる小冊子をもらうことが出来ます。またこの大使館に旅行者の記した情報ノートもあります。私も少し書きました。

ビザについて

 観光ビザの取得は、基本的に在住の国でと決まっています。ですから我々は東京にある大使館で取得せねばならない。93年にアテネで取得した友人、94年にラバトで取得した知人もいるので、可能性がなくもない。96年に私はアテネで拒否された。
 ツアーで入国するなら問題ないが、個人旅行者が観光ビザを取得するにはかなり運に左右される。国内情勢によって、何の問題もなく発行するときもあれば、ほとんど発行しなくなるときもあるので要注意。まあ担当官の機嫌を損ねない事!そして一度拒否されてもあきらめないこと。
 申請出来れば、発行後30日以内に入国、入国後30日以内に出国、という条件の観光ビザが一週間後に発行される。(滞在中に個人向けビザは厳しくなったそうで、途中から旅行者に会わなくなった。)
 (2000年後半からは、個人旅行には本国紹介が必要になり、発行に時間がかかるようになったとの情報あり。)

出入国手続きについて

 入国…入国したのはチュニジアから陸路Ras adjir。国境で車が渋滞し、直行バスに乗るとかなり時間を要すると思われる。しかし、乗り換えで歩いての入国は至極簡単。
 EDカードはアラビア語しか書いていないが、係官が英語で説明してくれ、記入は英語でOKであった。
 カスタムで荷物の検査がある。肌の露出した女性の写真が問題らしく、本や紙をまじめにチェック、でもすぐ終わった。
 お金についてのチェックは一切なかった。

 出国…船でマルタへ出たので、トリポリ港での経験です。
 入国時と同じアラビア語のみのEDカード。係官英語出来ず、よって英語記入不可。その辺の人に書いてもらった。
 大きな客船で乗客は全員リビア人。イミグレはリビア人と外国人に分れているので全く並ぶ必要なし。時間はかかっていたが、コンピューターの立ち上げに時間を要していただけ。(外国人の出入国はコンピューター管理なのだ)
 カスタムはツーリストだというとノータッチであった。免税店はない。

レジスターについて

 一週間以上の滞在者は、レジスター(外人登録)が必要である。しかし、自分で気をつけていないと、誰もこのような規則を教えてくれない。
 中級以上のホテルに泊まっていると、ホテルが実費だけで代行してくれる。(係官がホテルまで来てしてくれるらしい)
 ユースホステルなどに泊まると自分でせねばならない。トリポリでの手続きの場所はYHの近く、しかし誰も場所を知らず街中を行ったり来り、大変であった。料金は用紙代1D、代筆代2D、手続き料金5D。入り口で用紙を買って、中庭にある代筆屋で記入してもらう。アラビア語の記入なので、自分でするのは困難。それを窓口に持って行くと終わり。係官は誰も英語を話さない。西アフリカ諸国から出稼ぎに来ている人々がレジスターやビザ延長に大勢来ているので助けてもらいましょう。

通貨について

 通貨はディナール(Dと略す)、1Dが約55円くらいである。普通に流通しているのはすべて紙幣で10,5,1,1/2,1/4Dの5種類。コインは存在するが一度しか見なかった。最小通貨単位が14円くらいになるので分りやすいが、矛盾を感じるときもある。たとえばほとんどのカフェで、大きなカップに入ったカプチーノでも小さなトルココーヒーでも1/2D、細かい値段差はつけれないので仕方はないが…。
robadhinal

両替について

 ブラックマーケットはほとんど消滅…貿易用の公定レートは今も1$=0.46Dであるが、一部銀行や5星ホテルで旅行者は1$=1.9Dのレートで合法に両替できるようになった。ちゃんとレシートもくれる。ただしこのレートは99年12月より固定されているのでまた闇が出現する可能性はある。他国通貨(日本円など)も出来るがレートが悪い。固定なのだから当然悪く設定しているのだ。今のところ現金しかこのレートが適用されていない模様。再両替も不可能。

 本当にブラックマーケットがなくなったのか…再両替できない通貨なのだからそんなことはありません。ただし、滞在中はほとんどの闇両替レートは銀行レートの1$=1.9Dであった。銀行のディナールからドルへのレート(外人は出来ないが…)が1$=2Dだそうで、見つけた店では1$=1.98Dのレートで替えてくれた。

 チュニジア側の最後の街ベンガルダンの銀行の向かいに両替オフィスがありそこでのレートも1$=1.98Dであった。立ちんぼ両替屋のレートは極端に悪く1$=1.5D以下、だまされないように。

移動について

 リビアはでかい!アフリカ第4位、日本の約5倍のサイズである。そしてそのほとんどが砂漠で人が少ない。したがって移動距離が自然に長くなるので、充分に訪問の順番を考慮しておいた方がよい。

飛行機…安い!たとえばトリポリ−ベンガジ約700キロ(陸路で千キロ以上)が28D(1500円)である。当然混んでいるので早めの予約が必要となってくる。噂のようなオーバーブックはなかったし、地元民の様子を見る限りオーバーブックの心配はないと思う。銀行両替レートが実勢に近づいたので以前チケット購入に必要であった両替レシートは現在不要。
 昨年まで続いていた国連制裁により飛行機(部品を含む)の輸入も出来なかったため、ボロボロの飛行機(旧ソ連製)で有名であった。が、この一年リビア航空は飛行機の大量購入をした模様で便数は格段に増え、飛行場にはエアバスやボーイングが並んでいた。

陸路…バスや乗合タクシーがたくさん走っているが、ぼろい車が多い。バスはヨーロッパの中古が多く、基本的にエアコンが壊れているのに窓は開かない、窓があるバスはちゃんとしまらず隙間風が寒かった。冬だったから良かったが、夏は・・・。(古いガイドブックによれば夏は基本的に夜の移動となるそうだ)
 チュニジア国境−トリポリのようにぼったくりだと思われる区間もあるが基本的には安い。トリポリ周辺が安く、東部のキレナイカ地方はやや高い。南のフェザーン地方はさらに高い。全体的に距離に料金が比例しておらず運賃の予測がつきづらい。 
 政府系の会社のバスが一番安くて車も良い。出発時間も正確。長距離は予約制。立ち席なし。満席になると私営会社のバスを使う事にになるが高い!ぼろい!客が集まり次第の出発で待たされる!と3拍子そろっている。
 近場は便数の多いミニバスか乗合タクシーになる。まあ気にするほどの値段ではない。途中から乗るときは交渉しないと始発からの料金を請求してくるようだ。始発で乗るとぼっては来てないようだが、途中で降りても終着まで料金が同じことが多い。

料金例
 セブハ−ベンガジ 飛行機 28D 1時間、私営バス 25D 21時間かかった、政府系バス 20D 14時間らしい
 トリポリ−セブハ  飛行機 28D 1時間、私営バス 20D 所要時間不明、政府系バス 13D 13時間だった
 飛行機 トリポリ−ガダミス 21D、ガダミス−セブハ 28D、トリポリ−トブロク 35D、トリポリ−コルファ 42D 以上は聞いただけです
 乗合タクシー チュニジア国境−トリポリ 10D、ウバリ−フェジャージ 2D(2.5D)、フェジャージ−セブハ 5D(6D)、ベンガジ−トクラ 2D、アルバイダ−ベンガジ 6D 以上は実際に払った金額(言い値)です 
 バス トリポリ−ガダミス 8D、ガダミス−ナルート 4.5D、ナルート−トリポリ 4-5D、セブハ−ガート 12D、ガート−ウバリ 8D 以上実際に払った金額。

宿について

 宿泊したのはほとんどがユースホステル、リビア全土に数10ヶ所あり、ガートを除く主な観光地にはある。料金は一人あたり3〜5D。設備はピンからキリまで。一番良かったのはフェジャージで、きれいな個室でトイレシャワー付き。ひどかったのはベンガジとキレーネ、掃除のしてない汚い部屋で毛布やベットも非常に汚い。シーツも付かなかった(キレーネはあったが長い間洗濯をしておらずシーツとしては認めがたい)。共同シャワーは熱い湯が出るが他の人が洗濯した後などは非常にぬるくなる。
会員証が必要。なくてもOKのところや追加料金が必要なところ、泊まれないところなど非会員対応はさまざま。

 中高級ホテルが非常に安い。20〜60Dくらいで外国からのツアーに対応しているホテルに泊まれる。昨年までドル払いで1$=0.46Dで計算していたこれらのホテルが今は1$=1.9Dなのだから、超お勧めである。
 ガートのホテルは一軒のみ。ダブルで35D。砂漠の際など郊外に数カ所キャンプ場があり、バンガローみたいな小屋もある。ここが1人10Dであった。ユースホステルもリストにはあるが、町から100キロほど離れていた。

言葉について

 意外にも英語の話せる人は多い(少なくともチュニジアよりは)。英語オンリーでの旅行も可能かもしれない。禁止されていたアラビア語以外の看板も解禁され出現しつつある。とは言うもののアラビア語を出きるだけ覚えた方が良い。数字など基本的な単語もエジプトやチュニジアとは違う方言がままあり、順次覚えた方がなにかと便利。フランス語が役立ったこともあった。
 数字の例 1/4 ロバ 1/2 ノス  3/4 忘れた 1 ワジ  2 ゾーズ これだけは必須です。(でも3/4は忘れたし、1も自信が無い) 3以降はエジプト方言と同じだと思います。聞き覚えた言葉なのでちょっと違うかも。

食べ物について

 周辺のアラブ諸国と基本的には似ている。チキンが多い。ケバブなどもあり。海岸部は魚があるが割高、揚げてるだけでうまくない。高級レストランは非常に高く手がでず。イタリアの植民地の時代もあったので、ピザやパスタも普通にある。チュニジア以西では見られないコシャリ、フール、ターメイヤなどのエジプト料理もあれば、エジプト以東(北)では見られないクスクスなどのベルベルフードもある。しかし全体的に味が今一歩、食事を楽しみの一つとしては挙げがたい。
 メニューを作る習慣がないのか安食堂にはまずメニューがない。そしてぼってくる店も多く、結果選択の幅が狭められてもいく。特に地方に行くとツーリスト用ぼったくりレストランか、サンドイッチ、チキンくらいしかない。フェジャージにはレストラン自体がユースにしかないが、営業は夜だけ。お菓子でしのぎました。

飲み物について

 アルコールはありません。闇で存在はするのでしょうが、落ちているカンなどもビールはノンアルコール。
 カフェで一番飲まれていると思われるのはカプチーノ、おいしい。トルココーヒーやエジプト式シャイ、アラビックティーなどもある。両隣の国に比べかなり高い。最低でも0.5D(30円)。
 ツーリスト用レストランでのセットメニューにはコーラが普通含まれる。安飯屋でもコーラを頼む人は多い。
 水道水は飲用可といわれているが、かなり塩分が強く、飲みたくないような場所も多い。飲んでも問題はなかったが…

治安について

 かなり治安の良い国の一つ。普通の注意さえ払えば問題ないと思われる。ただし、今回の旅行中あった個人旅行者は二人で、いずれも日本人であったが、Mちゃんはガダミスの空港でカメラを持ってうろうろしていて警察に拘束されたし、K君は国立銀行を博物館と間違えて何度も入り口付近を行ったり来たりしてしまい、警察に拘束されていた。つまり出会った旅行者の被拘束率100%、秘密警察が多いとの噂はだてではないのか?おかげで犯罪が少ないのかもしれない。いずれにしても個人旅行者は見かけない国なので、常に見られていると思ったほうが良いかもしれない。

見所

 全体的に見所が多く、非常に面白い国であるが、普通の街はつまらない。

砂漠…なんといっても素晴らしいのが砂丘。特にセブハからウバリに続く主要道路に沿った砂丘群。色々な場所で砂丘を見てきたが、公共交通機関で簡単に行ける砂丘の中ではダントツの世界一である。フェジャージのYHに泊まりましょう。バスや乗合タクシーは目の前に止まってくれる。YHから歩いて約10分で大砂丘。砂丘に上れば見渡す限りの砂丘が地平線の向こうまで続く。セブハから出ている100$以上するツアーで来るのは同じ砂丘。ゆっくり出来ない分ツアーは楽しめないのではないか。YHの裏山には先史時代の壁画がある。サハラが緑であった時代のもので簡単に歩いて行ける場所にはキリンやシカが多い。ただし有名なアルジェリアのタッシリナジールにあるようなペインティングではなく線刻画です。タッシリナジールと同様なペインティングはガートから3泊4日が最低のツアーに参加してアカクスに行かざるを得ない。世界遺産であるが料金は数百ドルする。

ガダミス…説明は難しい。つい最近まで実際に住んでいた(最後まで残ったばあさんが死んだのは今年に入ってから)特殊な造りの都市の抜け殻。写真でもその素晴らしさはあらわせない。ぜひ訪れて欲しい。

遺跡…ローマ時代を中心とする遺跡が、海岸部にたくさん残っている。世界遺産に登録されているものが、そのうち3ヶ所。どこも発掘は完全には成されておらず、修復も進んでいない。歴史に詳しく、想像力豊かな人向き。すごかったのはレプティスマグナのローマ時代の風呂。これまで幾度もローマ時代の遺跡に訪れ、風呂跡も見てきたが、どこも基本的には床やその下のスティームシステムがあるだけ。当時の風呂がどんなのか知らなかった。リビアの他の遺跡やレプティスマグナにあったのも一つは同じであった。しかし…レプティスマグナ遺跡の中心からずっと離れた海岸の砂丘の中にその風呂があった。千数百年間砂に埋もれていたため崩れずにいたその風呂の姿は、今のトルコなどにあるハマームと全く同じ。中の壁に残る壁画の色もきれいに残っていて、これがそんなに古いものであるとはにわかに信じられない。
 遺跡や博物館の入場料はどこも同じで3D(外国人料金)。遺跡に併設のしょぼい博物館も遺跡入場料とは別に3D。しょぼい遺跡や博物館は3Dの価値はない。トクラの遺跡3D+博物館3Dなんて行くだけ無駄。遺跡はレプティスマグナ、キレーネ、サブラータ、アポローニャだけで充分。この4つはたとえ入場料が30Dであったとしても見逃せないが、トクラは無料でも時間の無駄であった。他の有名でない遺跡に行く気をなくさせるほど。実際に行くのを止めたので、地名を出した5つの遺跡以外の事は知りませんが…。

その他…トリポリのメッディーナやベンガジのスークは、楽しいところだが、他のアラブ諸国のものに比べ見栄えがする訳ではない。リビアが初めてのアラブ諸国となる人はいないと思うので、スークには期待はしないほうが良いかも。
 チュニジアの南部にあるのと良く似たクサールと呼ばれる独特の倉庫群がリビアにもあり、ナルートのものなどは非常にGOOD。

トリポリ案内図

tripoli
1.マルタ行き船 2.ガバメントバス 3.ジャマヒリヤ銀行(両替可)
4.グランドホテル
5星・両替可
5.グリーン広場
空港行き乗合タクシー
6.ユースホステル
7.トリポリ博物館 8.レジスターオフィス 9.ミニバス・乗合タクシー
チュニジア国境、サブラタ、コムス等
私営バス/ベンガジ・セブハ等
10.日本大使館 11.アレリウス凱旋門
12.墓地 13.墓地

 道路はかなりいい加減です。(いい加減な地図を参考にしか出来なかったから)ただ距離感と相対的な場所は合ってると思います。公共バス乗り場、大使館、レジスターオフィスなどすべて最近移転したもの。
 マーケットは6と9の間とメディナ内部の南側、新市街の繁華街は3の周辺。

全体的な感想

 予想外に普通の国で、旅行も非常にしやすい。写真撮影もそれほど問題なし。写真館を見ていただくと分かると思います。インターネットカフェさえある。お勧めの国。
 石油収入はインフラ整備(道は立派だし、水道水はどこでも飲料可!公営住宅も多い。)に費やされているが、国民所得から想像するよりはるかに貧乏くさい国。ぼってこないとの情報があったのだが、やっぱりアラビーの国、ぼってきます。
 旅行者が少なく、それゆえ親切にされる事も多い。我々の行動が日本人の標準だと思われる可能性が非常に高いので、心して訪れて欲しいです。

記MAR00

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