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カカオ脂 〜Cacao Butter/OLEUM CACAO〜

局方収載文書 ・本品はカカオの種子から得た脂肪である。
・性状:本品は黄白色の堅くてもろい塊で、わずかにチョコレートようのにおいが
    あり、敗油性のにおいはない。本品はエーテル又は石油エーテルに溶けや
    すく、沸騰無水エタノールにやや溶けやすく、エタノールに極めて溶けにくい。
・酸価:3.0以下。
・けん化価:188〜195。
融点:31〜35℃(融解しないで測定)
・貯法:密閉容器

注釈文書 ・カカオ脂の種皮を除いた種子(カカオ豆)を炒って圧搾又は抽出して製する。
・初め黄白色のものが保存中に退色することがあるが、異臭や酸敗した臭気があっ
 てはならない。ただし、抽出法で得たものはほとんど芳香がない。
・本品は常温で堅くてもろいが約25℃で軟化し、30〜34℃で溶けて澄明な液
 となる。
・本品は一度融解すると、その結晶の特異な多相形のため、短時間では安定な融点
 にならない。
・日本薬局方製剤への応用:坐剤の製剤用基剤(ロートエキス・タンニン坐剤など)

結晶多形 ・通常、融点は31〜35℃。これは安定なβ型の状態である。
・このとき、25℃以下では硬く、体温では急速に溶ける。
36℃以上で融解すると融点が下がり、23〜25℃で溶けるα型になってしま
 う。33℃で融解して固化すると、融点の高いβ型を維持できる。
・その他の結晶型の融点は以下の通り。
  γ型18.9℃
  α型23℃
  β’型28℃
  β型34.5℃
・夏も30℃以下で保存するのがよい。

その他の性質 ・配合薬品を少量の水に溶解し混和することもでき、成型しやすい。
・多型転移によるトラブルは、溶かしたカカオ脂にサラシミツロウを添加すると回
 避できる。

感想 ・手作りコスメの材料として有名なカカオ脂。局方品でなくてもよいのなら、東急ハ
 ンズなどの製菓材料コーナーでも売っています。
・本来食用に供するものなので、酸化的変敗を防ぐ限り、安全性は高いと思います。
・カカオ脂の最も特徴ある点は、なんと言っても結晶多形にあります。
・温度管理に注意して、結晶多形性を上手に利用すれば、コスメ作りも、より充実す
 ると思います。

 →溶けにくいカカオ脂(リップクリームなど)を調製するとき:
   溶かすとき36℃以上にせず、融点を33℃にキープする。
 →溶けやすいカカオ脂(ハンドクリームなど)を調製するとき:
   高温もしくは電子レンジで溶かせば、融点が24℃に下がる(^^)v

・私自身、学生実習で坐剤(坐薬)を作るとき、カカオ脂を溶かすときうっかり
 36℃にしてしまい、『固まらない坐剤』を作った苦い経験が (^^;;;;;
・それぞれの項目、用語についてはサイト内リンクを充実させていく所存です。

リファレンス ・第十四改正・日本薬局方解説書、廣川書店
・瀬崎仁他編・薬剤学、第2版、廣川書店
・調剤指針注解編集委員会編・調剤指針注釈−1997、薬事日報社
・一番ヶ瀬尚他編・医薬品の開発12巻、製剤素剤[T]、廣川書店
・佐伯正文・月刊薬事14,1689,1972.
・Muuzel,K.:Galeniches Praktikum,643.


感想欄以外は、嘘のない、主観の入らない文章を心がけています。
お気付きの点がありましたらメールをお寄せください
最終記載日:2003年6月24日

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