■局方収載文書 | ・本品はカカオの種子から得た脂肪である。 ・性状:本品は黄白色の堅くてもろい塊で、わずかにチョコレートようのにおいが あり、敗油性のにおいはない。本品はエーテル又は石油エーテルに溶けや すく、沸騰無水エタノールにやや溶けやすく、エタノールに極めて溶けにくい。 ・酸価:3.0以下。 ・けん化価:188〜195。 ・融点:31〜35℃(融解しないで測定) ・貯法:密閉容器 |
■注釈文書 | ・カカオ脂の種皮を除いた種子(カカオ豆)を炒って圧搾又は抽出して製する。 ・初め黄白色のものが保存中に退色することがあるが、異臭や酸敗した臭気があっ てはならない。ただし、抽出法で得たものはほとんど芳香がない。 ・本品は常温で堅くてもろいが約25℃で軟化し、30〜34℃で溶けて澄明な液 となる。 ・本品は一度融解すると、その結晶の特異な多相形のため、短時間では安定な融点 にならない。 ・日本薬局方製剤への応用:坐剤の製剤用基剤(ロートエキス・タンニン坐剤など) |
■結晶多形 | ・通常、融点は31〜35℃。これは安定なβ型の状態である。 ・このとき、25℃以下では硬く、体温では急速に溶ける。 ・36℃以上で融解すると融点が下がり、23〜25℃で溶けるα型になってしま う。33℃で融解して固化すると、融点の高いβ型を維持できる。 ・その他の結晶型の融点は以下の通り。 γ型18.9℃ α型23℃ β’型28℃ β型34.5℃ ・夏も30℃以下で保存するのがよい。 |
■その他の性質 | ・配合薬品を少量の水に溶解し混和することもでき、成型しやすい。 ・多型転移によるトラブルは、溶かしたカカオ脂にサラシミツロウを添加すると回 避できる。 |
■感想 | ・手作りコスメの材料として有名なカカオ脂。局方品でなくてもよいのなら、東急ハ ンズなどの製菓材料コーナーでも売っています。 ・本来食用に供するものなので、酸化的変敗を防ぐ限り、安全性は高いと思います。 ・カカオ脂の最も特徴ある点は、なんと言っても結晶多形にあります。 ・温度管理に注意して、結晶多形性を上手に利用すれば、コスメ作りも、より充実す ると思います。 →溶けにくいカカオ脂(リップクリームなど)を調製するとき: 溶かすとき36℃以上にせず、融点を33℃にキープする。 →溶けやすいカカオ脂(ハンドクリームなど)を調製するとき: 高温もしくは電子レンジで溶かせば、融点が24℃に下がる(^^)v ・私自身、学生実習で坐剤(坐薬)を作るとき、カカオ脂を溶かすときうっかり 36℃にしてしまい、『固まらない坐剤』を作った苦い経験が (^^;;;;; ・それぞれの項目、用語についてはサイト内リンクを充実させていく所存です。 |
■リファレンス | ・第十四改正・日本薬局方解説書、廣川書店 ・瀬崎仁他編・薬剤学、第2版、廣川書店 ・調剤指針注解編集委員会編・調剤指針注釈−1997、薬事日報社 ・一番ヶ瀬尚他編・医薬品の開発12巻、製剤素剤[T]、廣川書店 ・佐伯正文・月刊薬事14,1689,1972. ・Muuzel,K.:Galeniches Praktikum,643. |
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最終記載日:2003年6月24日