2人の世界旅 日々の記録

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モルドバ>2009年05月13日(Wed)
キシナウ行き夜行バス→キシナウ
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■モルドバに入国
「飲ま飲まイェイ!」
この「恋のマイアヒ(DRAGOSTEA DIN TEI)」で世界的大ヒットを遂げた「O-Zone」はモルドバ出身の男性3人組シンガー。あれはモルドバ語の歌です。ひょっとしたら「飲ま飲まイェイ!」までは、モルドバは、日本人には馴染みの薄い国だったかもしれない。

さて縦に長い国土をもつモルドバは、東はウクライナ、西はルーマニアと接しています。かつてはソビエト連邦構成国でもありました(※モルドバ共和国のスペルはMoldovaで、現在のロシア連邦内国家であるモルドバMordovaとは異なります)。

モルドバ国民の大半を占めるモルドバ人は、西の隣国ルーマニアの主要民族であるルーマニア人と同一の民族です。歴史の中で恣意的に境界線を引かれ、分断された民族の、東の片割れを形成しています。その他民族としては、ウクライナ人、ロシア人、ガガース人などが居住し、「民族のモザイク」を形成するモルドバ。

モルドバは、多様な人種混住だけでなく、ロシアやルーマニアなどの激しい領土争いの被害者といえるでしょう、繰り返し占領されてきたこともあり、内部事情は複雑です。内部では、ロシア系住民が多く集まる東部地域が「沿(えん)ドニエストル」として独立宣言をしたり、ロシアとの併合を望む人がいたり、沿ドニエストルを除くモルドバ本体部分でも、モルドバとして確立したい人やルーマニアとの併合を望む人がいたりします。

そういう一致団結のない民族性はときに国の発展を阻害するのでしょう。モルドバは、貧困な資源性や、ロシア・ウクライナからの経済制裁を敷かれるといった背景も重なり、現在、欧州最貧国と位置づけられる国家となっています。観光資源もありませんから、モルドバを訪れる旅行者は少ないのが現状でもあります。

さてさて、私たちはそんなモルドバの首都、キシナウChisinauの中央バスターミナルに、朝4時台という早朝に到着してしまいました。寒い寒い寒い寒い。今日泊めていただけることになっている、キシナウ在住のセルゲイさん(中年の男性です)からは「いつ家に来てもいいよ」と連絡をもらっていたこともあり、暗い間はバスターミナル(屋外)で寒さに耐え、明るくなった朝6時ごろに門を叩きました。家の感想については今日の日記の末尾に書こうと思います。

午前中もまだひんやりした空気でしたが、家に荷物を置かせてもらったら観光に出かけました。あまり見所のないキシナウですが、それでもスタジアム、聖なる門、正教教会、そして中央市場を見てきました。もちろん歩く間に目に入る、社会主義色を残す廃れた街並みも、ときに立派な建物が並ぶ地区も、どちらも観光ポイントです。

中央市場

ああ、旧ソ連らしい光景ですね。このあたりは華やかなほうですけど。

ただね、物価設定は、「異常」です。庶民の暮らしぶり、統計で見る平均年収、例えば交通費から見た食糧費の比率の高さなど、「これ絶対高すぎ」と思うものが明らかに多いのです。食堂で(それでも立ち食いの安安食堂ですけど)食事を摂る私たちは、外食としてのある程度の出費は必要でしょうけど、市場の野菜や乾物といった、庶民の基本的なものまで異常に高いから、不思議です。モスクワとかに出稼ぎにいかないとやっていけない家庭はたくさんあるのだろうなーと、思っちゃう。

さて、セルゲイとは午前11時頃にいったん家に戻ると約束してあったので、そこから少しお昼寝をさせてもらったら、午後に再び街へ出て観光&用事を済ませました。用事とは、いつものことなのですが、バスターミナルや鉄道駅へ行って時刻や値段を確認したり、両替をしたりといったことです。ちなみに明日は、移動費が安いルートを取る都合上、先述の沿ドニエストル(上述のモルドバ内で独立宣言をした地域)へ行くのですが、ここはモルドバ本体とは使用通貨が異なるので、残金を常に念頭に置きながら行動しなければなりません。たくさんモルドバレイを余らせたらもったいないのは分かっていますが、面倒なことに違いはありませんね。

ちなみに、食事は、ショーケースに並んでいるまとめ作りのおかずを実際に目で見てから注文できるスタイルが多く、「好きなものを少しずついろいろと」食べることができます。レストランで文字だけのメニュー表から選ぶのと違って、これは良いなと思いました。

■モルドバの民家
さて、先ほども書きましたが、今日は民家宿泊。しかもモルドバで。

古い木造平屋の家は、昭和の日本にも多かっただろう外観でもあります。でも中は驚きの連続。床がきしむとかはまだいいのです。お風呂やシャワーはなく、狭い台所に無理矢理にバスタブを置いてあります。バスタブの近くに置かれているタンクからお湯は出ません。狭いトイレには無理矢理に便器を設置した様子で、便座に座ると扉が閉まりません(足が廊下にはみだすため)。家の中にコンセントは少なく、室内にはコンセントがありませんから、廊下の1箇所から複数の部屋と台所へ電気をひっぱるため、家中が延長コードだらけ。更には家賃をシェアするためでしょうか、他の住民も同居しています。

貧しさのイメージのモルドバでは、きっとこういう家は少なくないのでしょう。ひょっとしたら「モルドバらしい家」の典型なのかも。

セルゲイも同居住民(こちらも中年男性)も仕事がなく(セルゲイの奥さんは働いていますが)、同居住民にいたっては、ネット中毒というかネット廃人というか、24時間パソコンの前で過ごす人(トイレ以外マジでずっとネット(フェースブック)してるし、寝るのもパソコンの前で突っ伏すのです)。

うーむ、この点は21世紀のモルドバなんだろうなあ。仕事がなくても食べるものがなくても、インターネット回線は手放せない点が、です。決してモルドバだからと遠い目で見るものではありませんよね。日本にも、ネットだけは手放さないひきこもりは、きっと少なからずいることでしょう。

でも日本が失ってきている、物を大事に使う&ゴミを減らす暮らし方もあるようでした。ヨーグルトの一部を取り分けて次のヨーグルト作りのために乳酸菌を増やしたり、日本でなら簡単にゴミ箱に入ってしまうような紙をトイレに置いて有効活用したり、台所にあまり食料がないのでそもそも無駄にする食料がないこととか、部屋にゴミ箱がない(出るゴミが少ない生活)、といったところです。

「無駄遣い大国」に片足を踏み入れた日本人は、「貧しさ」から学ぶこともたくさんあるのだとも思った次第です。ネット廃人は良くないけどね。

モルドバの一般家庭を見る機会は、モルドバを知るとても良い機会でした。
本日の旅
行動 :ルーマニア出国、モルドバ入国、キシナウ到着、キシナウ観光
朝食 :Salata din ciuperci mar cu ceapa(サラートゥディンチュペールチマルナデクチャパ、しいたけなめこしめじのほんのり酢漬けをオイルと小ネギでマリネしたもの)、Sarmale Tarencuta(サルマーレツェレンクツァ、米赤ピーマントマト酢煮のブドウの葉またはキャベツ巻き)、Ciorba cu fasole(チョルバクファソレ、にんじんじゃがいも玉ねぎ赤ピーマン香草入りさっぱりスープ)/キシナウの食堂
昼食 :ピエレツ(空洞大きいピーマンに米にんじん玉ねぎひき肉トマト煮を詰めて炊いたもの)、Вареники(バリェーニキ、つぶしゆでじゃが塩こしょうを厚めの皮で水餃子にしてスメタナというサワーヨーグルトを乗せたもの)、サラートズグリバーニ(ゆでじゃがきのこベーコン玉ねぎのオイリーマヨ和えサラダ)、лапша(ラプシャ、平うち麺に茶色いディープソテー玉ねぎを絡めたもの)/キシナウの立ち食い食堂
夕食 :Cartofi inabusiti(カルトフィイノブシトゥ、じゃがいもにんじん千切り玉ねぎソテー)、Bors(ボルシュ、ビーツ玉ねぎキャベツすっぱめスープ)、Terck din hrisca(テルチデフリシュカ、麦を炊いたもの)、Linba de vita farta(リンバデビタファルタ、牛タン塩漬けの水煮)/朝と同じ食堂
宿泊 :セルゲイさんち

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旅情報
1ルーマニアレイ=33.5円
1モルドバレイ=9.1円

*「Chisinau」
モルドバの首都「Chisinau」は、ロシア語読みではキシニョフで、モルドバ語読みだとキシナウになる。モルドバ国内では、ロシア系住民と思われる人の前では「キシニョフ」、モルドバもしくはルーマニア系と思われる人の前では「キシナウ」と心がけてきました。この旅日記のページでは、あくまで「モルドバの首都」という位置づけから、キシナウという表記を使っています。