宿で軽く朝食をとり、8時20分に出発する。走り出して10分ほどでニューヨーク州に入る。通勤時間にニューヨーク市に向かう道とあって交通量が多いが、車線が多いこともあり、車の流れは割とスムーズだ。ニューヨーク市に入る寸前のブロンクビルの辺りから、車の流れは悪くなってきた。出発して1時間半ほどでマンハッタン島に入る。ジョージワシントン橋の辺りからハドソン川沿いの道を南下する。対岸はニュージャージでレンタカーの初日に北上した道だ。リバーサイドパークで無料の駐車スペースが空いていたので、一休み。写真右側の橋がジョージワシントン橋、ハドソン川の向こうはニュージャージー州だ。
アッパーウエストサイドの86ストリートで、ブロードウェイを横切り、そのままセントラルパークを突っ切る。公園出口で右折し、そこから5番街を南下する。ここからは渋滞しており、車はほぼ徐行することになる。ニューヨークの中心部にある有名な場所を外観を楽しみながら進む。最初がメトロポリタン美術館。
前半はセントラルパークに沿って進むので、大都会ながら緑が多い。
セントラルパークが途切れる場所にあるのはプラザホテル。今は他にも色々あるだろうが、40年ほど前、ニューヨークへ私が初めて来た時には、ここがニューヨーク一のホテルとして知られていた。
ここから南は道の両側に世界中の高級ブランドの店が並んでいる。ティファニーはここが本店だ。
大統領選挙期間中ということもあったのか、観光客で写真を撮っている人が圧倒的に多かったのが、トランプタワーだ。
エンパイアステートビルは、1931年の完成から、ワールドトレードセンターに抜かされた1972年まで世界一の高さを誇るビルだった。幼い頃は世界一高いビルと覚え、あこがれていた。バックパッカーとしてアメリカを横断した時は既に、ワールドトレードセンターやシカゴのシーアーズタワーに抜かれていたが、展望台にまで登ったのはこのエンパイアステートビルのみで、ワールドトレードセンターやシアーズタワーは外から写真を撮っただけ。
5番街から離れ、ワールドトレードセンターを遠方から見て、ニューヨークドライブは終了。
ホランドトンネルでハドソン川をくぐり、ニューヨーク州からニュージャージ州に入る。今回はニュージャージは素通りで、最後にロパットコンで給油したのみ。
Googleのナビに従って走っていたら、州境ですごく迂回をする。他の車が進むのでナビがおかしいのかと不安になって、少しストップ。有料道路を迂回する設定にしていた為に迂回路に入ったことが判明した。アメリカ東部の有料道路はETCのようなものがないと払えない道路が多いので、基本は有料道路迂回にしている。レンタカーに有料道路の料金を支払うマシンが付いているが、オンにしていると有料道路を走らなくても毎日マシンのレンタル料がかなりかかるので、使う気にはなれない。これをオンにしておいても州によっては違うマシンでないと使えないことも多く、分からずに走ると後日高額の罰金が来る。一々事前に払い方を調べて、クレジットカードや現金で払えるなら使うことに最初はしていたが、調べるのが面倒になって途中からは調べていなかった。
2本の橋を迂回し渡ったノーザンプトンストリート橋は、無料で助かった。ニュージャージからニューヨークへは迂回する場所がなく、迂回するならオールバニーまで行かねばならないので、その距離往復で500キロ近く…。せめてクレジットカードや現金で払えるようにして欲しいものだ。
橋を渡ると9州目となるペンシルバニア州。観光ポイントが手前だったが、13時になったので通り過ぎて、先にランチ。ペンシルバニアで人気のホギー専門店へ。ホギーも細長いサブマリンサンドイッチの一種だ、
サンドイッチなので具やサイズは色々選べる。フィリーチーズステイクは、ペンシルバニア最大の都市フィラデルフィア(愛称がフィリー)名物のチーズステーキを具にしたホギー。
イタリアンは、先日食べたものと同じように3種類のハムやサラミが入っており、チーズや野菜は選ぶことが出来た。注文してから作るので待たされるが、その分非常に美味しい。特にチーズステーキは冷めたらチーズが固まりそうなので、出来たてが必須だろう。
食事の後、今年モラヴィア教会の入植地の1つとして世界遺産登録されたベツレヘムにやって来た。デンマークのクリスチャンスフェルドが「モラヴィア教会の入植地、クリスチャンスフェルド」として世界遺産登録されたのが2015年。そして同様なモラヴィア教会の入植地だった「アメリカのベスレヘム、ドイツのヘルンフート、イギリスのグレイスヒル」が同じ「モラヴィア教会の入植地」として今年になって追加登録された。正直ベスレヘムは今回の旅計画を立て始めるまで全く知らず、計画ルート上で立ち寄る場所がないかと探している時に見つけた。今年登録されたばかりの世界遺産なので情報はあまりなかったが立ち寄ることにしたのだった。モラヴィアはチェコの地方名で18世紀にプロテスタントの一派として派生したモのがラヴィア教会。新しい宗派として迫害されたの信者が、迫害を逃れて移住して作った集落が、モラヴィア教会の入植地である。
モラヴィア教会の信徒がこの地に入植したのが1741年のクリスマスイブで、キリストの誕生日を祝して誕生地と同じ地名がこの地につけられた。鉄鋼業で発展してきた都市だが、鉄鋼業の衰退とともに寂れてしまった。世界遺産に指定され、今は観光都市として生まれ変わろうとしているところだ。
最初に訪れたタンナリーは、1761年以建てられた皮なめし工場で入植地の重要な役割を果たしてきたが、1829年に廃業。20世紀に一時再開史跡として再開されたが、再び閉鎖。今は廃墟となっている。
モラヴィア墓地も入植地の姿を伝える重要な場所で、世界遺産の一部となっている。
中央モラヴィア教会は入植地の中核となる美しい教会。
モラヴィア大学も世界遺産に指定された入植地の重要な建物。新しく指定されたばかりなためか、世界遺産登録されている建物の周辺に大した説明もなく、ウェブの情報を頼りに世界遺産散策をする。
14時45分、ベスレヘムを出発。アーミッシュで知られるランカスター地方を目指す。アーミッシュは、アメリカやカナダに居住するドイツ系移民を主としたキリスト教の小会派で、移民当時の生活様式を保持する宗教集団を指す言葉だ。アーミッシュの人々は今も入植当時の生活習慣をかたくなに守る人々として知られている。独特な生活習慣をる彼らの暮らしは、非常に興味深い。30数年前、ペンシルバニアに留学をしていた友人を訪ねた際に、どうしても行きたいとリクエストして訪れたのが、このランカスター地方だった。
今も当時とそう変わらない暮らしをアーミッシュの人々は続けているが、その文化を紹介する農園が観光地になっていたり、土産物屋がたくさんあったりと、変化は色々と感じられる。自動車を拒否している彼らが移動に使うのは今も馬車。しかし、安全のためにウインカーをつけるのが義務付けられてしまった。電気を拒否していた彼らだが、妥協しソーラーパネルとウインカーを今は取り付け馬車で走っている。
土産物屋など彼らの本来の文化とは違うと思いながらも、売られているものは彼らの文化を伝えるものなので、立ち寄ってみる。無農薬をうたう農産物や手間のかかりそうな手工業品が多く並び、タイムスリップしたような感覚を受ける。
アーミッシュとそうでない人々の混住する地域だが、車庫にあるのが車か馬車かなどでどちらの家なのかは推測できる。アーミッシュらしき農場にある巨大サイロ。電気なしにどうやって上部に物を持ち上げるのかが気になる。
今はアーミッシュの人々の写真も多く見かけるが、普通の人は写真を嫌がるのか、すれ違う馬車の写真を撮ると顔を隠されてしまった。
ファーマーズマーケットへ。この地域の農産品などが売られている人気の市場だ。
市場の店は観光客慣れしているのからか、アーミッシュの人でも写真を嫌がらないのがうれしい。ちょっと時間は早いが、ここで夕食をとる。
ブラッドブルストホットドッグを注文すると、温めてあったソーセージをパンに挟んで出してくれただけ。
ソースなどは自分の好みで入れろというスタイル。初めて食べる人には難しいが、たくさん入れてみる。
もう一品はホームメイドチリ。クラッカーが付いてきた。
市場から宿に向かう途中で、足でキックしながら進む古い型の自転車に乗る人がいた。内燃機関を取り入れていないアーミッシュらしい乗り物だ。
18時過ぎにランカスター郊外スモークタウンにあるモーテルに到着する。本日の走行は230マイル、370キロ。
アーミッシュの土産物屋で買ったプレツェルをハニーマスタートをつけて夜食に食べる。
アーミッシュが多く住む地域のホテルなので、ベッドに入って静かにしていると、通りを走る馬車の音が、時おり聞こえてくる。なんだか映画の世界にでもいるような気分になりながら、眠りに着いた。