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2019 東チベット
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カムとアムド
9日目 →西寧(シーニン)
午前2時過ぎ、気が付いたらバスは駐車場のような場所で停まっていた。標高は3900m、ようやく4000mを切ったようだ。そのままいつまでも出発せず。
再出発は5時だった。バスのスタッフは2人いるが、運転手が1人で仮眠していたのだろうか。朝早く着き過ぎることを心配していたが、到着はかなり遅くなりそう。
ずーっと標高3000メートル以上ある高原を走り、西寧到着寸前になってようやく標高が下がりだした。
西寧は青海省の省都であり、人口200万人を越える大都市だ。漢族が人口の4分の3を占め、回族が約15%いる。チベットのアムド地方にあり、郊外にはチベット仏教の主要寺院の一つである塔爾(タール)寺もあるが、チベット人は6%ほどしか住んでおらず、街の中心部は漢族と回族の世界だ。
10時前に西寧駅のそばにあるバスターミナルに到着。出発が1時間遅れ、途中3時間謎の休憩があったことを考えると、普通に走れば12時間だろう。しかし、16時間もかかったのに、一度も食事休憩がなかったことが、驚きだ。にもかかわらず、さして空腹感もないのはさらに驚き、他の人も持ち込んだ食べ物を口にしているようには見えなかった。
ターミナルでは青海湖一日ツアーの呼び込みが多く、パンフレットなども見たが、行かないことを決め、明日朝の夏河(シャーハ)行きバスチケットを購入する。
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駅近くのマンションにある宿を予約してある。住所が玖鷹蟲草市場とあり、読み方の分からない蟲草の文字で、玉樹で見たばかりの冬虫夏草をイメージはしていた。そしてそのマンションの敷地に足を踏み入れると回族の人々が大勢居り、何やら取引をしている。
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まさに冬虫夏草!
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蟲草は、冬虫夏草の別名で、玖鷹蟲草市場は有名な冬虫夏草市場なのだった。玉樹辺りが有名な産地なので、玉樹産と表示しているものもあり、非常に親しみが沸く。
冬虫夏草の店が並ぶ1階に何ヶ所か通路があり、宿のある上層階にはそこから入って行く。きれいな宿でひと休み。夜行の疲れで、一眠りしてしまい、12時半頃にようやく外に出た。
街の観光半日、郊外の塔爾寺半日の計画だったが、午前中は観光せずに終わってしまった。この先、またチベット世界に戻るので、塔爾寺は諦め、街歩きすることにする。昨日の昼から何も食べていないので、まずは食事だが、まださほど食欲がない。麺なら食べられそうだと、麺屋を探す。入った店には、涼皮(リャンピー)や涼粉(リャンフェン)のような冷たい麺が何種類もある。西寧名物だという2種類を注文。つるりとのど越しが良く、食欲のない時には良い食べ物だ。
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青海省最大で、中国西北地区でも最大モスクの一つといわれる東関清真寺に向かうと続々とムスリムたちが中に入ってゆく。外の敷地まですぐに一杯になる。
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アザーン(礼拝への呼び掛け)が流れ、人々がお祈りを始める頃には周りの道路にまで信者があふれている。始まってからも続々と信者は増える。
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別の場所でお祈りをする女性の方はそれほど混まなかった様子。
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交通整理の警官も大勢出ており、信者は車道にまではみ出してお祈りをしている。
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他国では、お祈りをしているイスラム教徒の姿をカメラに収めることは雰囲気的に難しいことも多いが、ここでは地元の人や観光客がばしばし写真を撮っており、気楽に何枚もとることができた。
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イスラム教徒は金曜日が休日で、金曜昼のお祈りが1週間で一番大事なお祈りだとされている。しかも、今はラマダン月だ。意図して合わせた訳ではなかったが、一番盛大なラマダン月の金曜昼の礼拝を見ることができ、ラッキーだ。
モスク周辺にはイスラムの食材を売る店が並び、食堂も多い。しかし、ラマダン期間中なので、皆さんテイクアウトのみ。
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モスクから出てくる人の波は、途切れることなく30分以上続いていた。中にどれほど多くの人がいたのだろう。
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近くにあった別の新しいモスクはひっそりとしていた。
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青唐城遺址公園を訪れる。青唐は、チベット統一国家であった吐蕃(とばん)の崩壊後、この地域を支配した青唐王国(1032年 - 1104年)の名であり、その時代に築かれた城壁が一部ここに残っている。公園には人が多いが、誰も城壁には関心を払っていない様子だ。青唐はチベット人の国だから、漢族は興味ないのだろうか。
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帰路、書や墨絵を売っている店があり、書家で昨夏亡くなった父の事をつい思い出してしまう。
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古そうな壁が連なる遺跡のような一角に、ユースホステルがあった。ここなら泊まってもおもしろかっただろう。
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ユースの並びに別のタイプの伝統家屋があり、良く見るとヨーグルト屋だ。食べてみると濃厚ですごく味が濃くて美味しい。
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17時過ぎに宿へ戻り、日没時間近くまで休憩。20時前から出かけ、東関清真寺を再度訪れる。先ほどの時間は観光客立ち入り禁止だったが、今度は人が少なく、中まで入れた。外観はモスクらしかったが、中は普通の中国寺院に良く似ている。
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最奥部の礼拝所まで入れたが、ここはお祈りの時間が近づくと再び観光客立ち入り禁止となった。
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日の出ている間は食事はおろか、水分もとらないのがイスラム教徒のラマダン月だ。日が暮れると最初の食事をとる。多くの国で、空っぽのお腹に良いのは一口の水と甘いナツメといわれている。この辺りではナツメは取れないはずだが、ここでも最初はナツメのようで、日没前からナツメを配っている。
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ナツメだけでなく、様々な食べ物を配っており、写真は粽。
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飲み物も配っており、この青海名物の紅茶は非常においしい。
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子供たちはお祭り騒ぎで、大きな袋にふるまいの食糧をたくさん貯めて走り回っている。それでも見たところ子供たちも日没まで何も食べず待っている。日没の合図とともに人々は水分を口に含み、ナツメを食べる。子供たちと一緒に私は他の頂いた食べ物に手を出すが、大人たちはここから日没後の礼拝をする。
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帰る頃にはもう真っ暗で、モスクのライトアップが美しい。
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色々頂いたが、夕食分とはならなかったので、帰り道で焼飯を食べる。
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意外に楽しい街で宿も良いので、もう一日居たくなるが、明日朝のバスチケットを買っており、予定通り明日朝出発することになる。