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2019 東チベット
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日記»
カムとアムド
10日目 西寧(シーニン)→夏河(シャーハ)
朝7時頃、朝食に出かける。冬虫夏草市のにぎわいを期待したが、まだ何も始まっていない。と思ったら、建物の逆側が今朝は賑わっている。昨日見た時はほぼ全員が回族だったが、今日はチベット人らしき人も多い。高山でチベット人たちが採集してきたものをここに運んできて、回族の仲買人が買い集めているのだ。ここでは虫の部分に土がついたままやり取りされている。仲買人たちは、ここで早朝に買い付けた冬虫夏草をきれいにし、分類し、全国から買い付けに来る業者に売るのだろう。
昨夜焼き飯を食べた店で麺の朝食をとり、いったん宿に戻る。8時にチェックアウトし、バスターミナルへ。バスは8時半発だが、実際に出たのは45分。四川省でのバスは2度とも定刻ぴったりに出たのに、青海省のバスは2度とも定刻に出ようという気概は感じられず、当然の様に遅れた。たまたまか?
同仁までの約170キロは高速道路を走る。標高2200mの西寧から2500mの同仁までは、緑も多く、荒涼としたチベット高原とは違って、住みやすそうな印象を持つ。30分ほど走った海東市辺りで万里の長城のようなものが見えた。万里の長城の一部は青海省まで延びていると聞くが、ここがそうなのかは分からない。
大きなモスクが見える辺りは回族の村なのだろう。
仏塔がそびえる村はチベット族?
高速から降り、同仁の中心へ延びる道と夏河への分岐で、トイレ休憩。そこからは山道で一気に高度を上げてゆく。土壁の集落が目に付くようになり、またチベット世界に戻ってきたような気分になる。
省境手前の瓜什則郷で、バスは停車。坊さんが数人降り、しばらくして大量のヨーグルトやミルクを抱えて戻ってきた。ここは至るところにヤクヨーグルトやヤクバターなどの看板があるので、この村の名物なのだろう。標高がかなり高いようで、坊さんたちは息を切らし、いつまでもゼイゼイいっていた。
峠を越えると甘粛省に入る。
一気に標高を下げた先には高原が広がっている。羊やヤクが放牧されているが、良く見ると牧童がバイクに乗っている。カム地方では見なかった現代的な光景だ。
青海省側に比べ、甘粛省側はなだらかな地形で、ずっと先の街まで見えてきた。
12時50分、夏河のバスターミナル到着。バスターミナル周辺の店は回族か漢族の店が並んでいる。チベット系の店で食事をしたかったが、中々ないので漢族の店へ。ここまでの街で無料の飲み物といえばお湯だったが、最初に入ったこの店からずっとお茶でありがたい。
食べたのは各民族共通の平麺。チベット語でテンツク、中国語では面片だ。カム地方で食べると唐芥子がいっぱい最初から入っており、テーブルにはないが、アムドに入った西寧以降、唐芥子はテーブルの上で自分で入れるようになっている。最初は出されたまま食べたが、入れた味に慣れてしまったのか、物足りず途中からはかなり辛くして食べた。
外国人に人気のあるチベット人経営の宿にチェックイン。宿の兄ちゃんは英語がペラペラで、助かる。2階は居心地の良いカフェ兼談話室となっている。居心地のよさそうな場所なので、妻はここまで集めたチベット食の疑問点を宿の兄ちゃんに聞きながら色々整理したいという。妻の好きそうな場所なので仕方なし。
小さな町に2泊するので、観光は明日でもよい。しかし、天気が崩れるのは嫌だし、ここの寺を回るコルラ(巡礼)道は何度歩いてもおもしろそうなので、私は一人で出かけることにする。コルラ道にはずらりとマニ車が並び、巡礼者たちが黙々と歩いている。
工事しているところが多く、マニ車を取り付けているところや色を塗りだしたばかりのところもあり、おもしろい。
コルラ道から南西方向に離れた場所に小山があり、展望台となっている。実際の展望台は写真の右下に映っている長方形の場所だが、右側のもっと高いところに登ってみた。
下に降りて、コルラの続き。距離が長いし、マニ車を回しながらだと写真も撮りづらいので、私は途中からはマニ車を回さず歩くだけだが、巡礼者たちは仏塔の周りなら数周してから先に進むし、中には五体投地しながら進んでいる人もいる。
寺の表側は道は舗装され、マニ車も整備されているが、裏側は未舗装路で、ほとんどの人はタダ歩くだけ。
コルラ道は寺院群の外周なので、途中何ヶ所も中に入る場所がある。一ヶ所くらいと中に入ることにする。
人の流れに従うとまずは建物の外周を回る。
そして内部へ。ここも壁の絵が素晴らしい。
再びコルラ道に戻り、歩く。
途中小さな僧房のようなものが山腹に並んでいるところがあった。僧坊にしては小さいので、お堂、それとも墓地か。
杖を突いて足元がおぼつかない人も歩いている。
斜面に少し登り、次々と歩いてくる人々を眺める。観光客が多いと聞いていたが、ほぼ全員が巡礼者だ。
コルラ道を五体投地で歩いている人もいたが、何ヶ所か固定台のあるところもあり、そこでの五体投地も盛んに行われている。
意外に若い巡礼者が多く、子供連れの家族さえ何組もいた。
五体投地とは、五体(両手・両膝・額)を地面に投げ伏して、礼拝することをいう。移動せず、礼拝する方向に何度もすることが多いが、巡礼者の中には、体を投げ出して手の先が届いた場所まで進んで、また体を投げ出すということを繰り返し、進むものがある。この方法なら、一度に2メートルくらい進めるので、気が遠くなるほど大変だが、前には進める。しかし、ここでは寺院の方向に向いて体を投げ出し、体の幅分だけコルラ道を進んでまた体を投げ出すという巡礼者を何人か見た。一度に数十センチしか進めない・・・。
私は1周だけ歩いて、街に出た。寺院に面した場所にはチベット料理屋が並んでいる。寺院から東に延びる大通りは、チベット人の商店がずらりと並ぶ繁華街となっている。そしてそこを歩く人々のなんとオシャレな事か。こんなにオシャレなチベット人達を見たことがなく、びっくりしてしまった。
仏具屋や僧衣屋には大勢の坊さんが群がり、皆さん盛んに買い物をしている。これまでに訪れた街でも仏具屋や僧衣屋に買い物に来ているのは当然僧侶が多かったが、これほど賑やかなのは初めてだ。
宿に戻ってひと休み。妻はずっとカフェのテーブルで宿のお兄ちゃんに色々教えてもらっていたそう。しばらくして、カフェに客が来て、お兄ちゃんは厨房に入った。コックも兼ねているのだ。そろそろ夕食に出ようと思っていたところで、隣のテーブルに次々と料理が出て来た。好奇心が抑えられない妻は、写真を撮らせてもらい、食べ物の名を尋ねる。この辺りの中国人やチベット人は非常にやさしく、当然の様に一緒に食べようと誘ってくれる。そして、私も。
左は、マッシュルームにツァンパを乗せ焼いたもの。ヤクの放牧中にキノコがあれば、昼食用に持っているツァンパをかけて、焚き火で焼いたのが始まりとかで、ヤク飼いのランチという意味の名がついている。真ん中はヤク肉の揚げパン。右側は、肉や野菜を重ね焼きしたもの。どちらもチベット料理だ。
こちらは肉と血のソーセージ。全部おいしかった~。
ごちそうしてくれたのは、チベット人2人と漢族1人で、みなさん警官だそう。グーグルの翻訳アプリを使っての会話で、意思の疎通は結構できた。便利な時代になったものだ。