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2022 欧州 北極圏から地中海まで
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ノルウェー,オランダ,ドイツ,フランス,ルクセンブルク,ベルギー,スペインの旅
6日目 スボルバル-レクネス-レーヌ
世界で一番美しい島々とも称されるロフォーテン諸島は今回の旅のメインの目的地だ。北極圏に位置する諸島は、氷河地形に囲まれた本当に美しい場所である。コロナでの旅行制限が夏前に終わると考えて春から計画を練っていた。現地での旅行制限は期待通り初夏にはなくなったが、日本帰国時の制限がきつく、中々出かけられないでいるうちに、この地域のベストシーズンは終わってしまった。9月から帰国時のPCR検査をなくすという発表があったのが8月末のこと。ロフォーテン諸島の計画はもう来年に回そうかと最初は考えた。オフシーズンになると移動手段が限られ、宿も多くが閉まってしまうのだ。しかし、9月中なら何とかなりそうで、ひと月かけてスカンジナビアの北部と考えていたのを10日間にし、残りの日数はヨーロッパのもっと南に充てることに決める。10日間といっても行き帰りの時間もあり、ロフォーテン諸島は実質一週間である。この日程では行ける場所も限られているのに、計画最終段階になって9月下旬からはオーロラが見れることを知る。そしてオーロラならロフォーテン諸島よりもその北にあるベステローデン諸島(Vesterålen)の方が良いというのでそちらにも足を延ばすことに・・・。おかげで体調を崩しても休めないようなきつい日程となったのだった。
やっと腹具合がましになり、夜中にトイレに行くこともなかった。ぐっすり眠ったのは出発してから初めて、5日ぶりか。まだ食欲はなく、絶食をもう一日続けるつもりだったが、妻の食べる朝食がうまそうで、ライスプディングを数口だけ食べた。液体以外を摂取するのは50時間ぶり。回復してきてほっとした。
10時頃から、スボルバル(Svolvær)の西にある小島の散歩に出る。天気も良く、気持ち良い。
フィヨルドの海に突き出た建物は本来漁師小屋だが、近年はツーリスト用コテージとして転用されているものが多い。
屋根の上に草が生えた建物がこの地方では散見される。よく見ると普通の屋根に土盛りをし、生えている植物も選んで植えている。冬には断熱効果があり、夏は草の水分が蒸発する気化熱による冷却効果があるのだという。
大きな三角の木組は干しダラを作るためのもの。干している時期の写真を見ると壮観だが、今はオフシーズンで干しているところは一つもなかった。
小島とスボルバルを結ぶ橋。この橋を歩いて往復した。
今では多くの島々が橋で結ばれているが、当然昔は橋などなかった。ロフォーテン諸島に一番東にあるアウストヴォーグ島とその東にあるヒン島が橋で結ばれたのは1997年のこと。その道とスボルバルが結ばれたのは2007年である。今ではスウェーデンと鉄道でつながるナルビクからロフォーテン諸島に西端にあるオー村まで直通バスが走っており、多くの旅行者に使われている。初めて私がロフォーテン諸島に来たいと思って調べたころは、本当に不便な地域だったのだ。日程のやりくりが難しく、この時は訪問を諦めている。橋の上からスボルバルの街を見ていると、ふと昔のことを思い出した。
いったんホテルに戻り、12時にチェックアウト。街の中心にある人気レストランBacalaoに行く。
昼食は店名にもなっているバカラオを注文する。バカラオはスペイン語で干しダラを意味し、干しダラを使った料理名でもある。ノルウェー産の干しダラを使ってポルトガルで生まれたバカラオと呼ばれる料理は、南欧や中南米で広く食べられており、その料理方法が干しダラの産地であるノルウェーにも入って来て、今ではノルウェーでも広く食べられる名物料理となっている。この後、長距離移動が控えているので、途中でのトイレがまだ怖い私は今晩まで絶食のつもりで、注文したのは妻だけ。しかし、一口もらうと美味しくて、全体の一割くらいを食べる。
昼食後も腹痛にならず、これで一安心し、14時発のバスで無事に出発した・・・はずが、トラブル。サブバッグが見当たらない。どこかで忘れてきたのだ。次のバス停で慌ててバスを降りた。
レストランで忘れていたバッグは無事に見つかったが、当然バスは行ってしまった。バスの本数は少なく、目的地であるレーヌに着く予定が、17時から23時に変わってしまった。本当にがっくり。実は最初に調子悪くなった列車で、充電用の変換プラグを忘れて無くしてしまった。そしてモションのレストランではトイレにスマホを置き忘れ。これはすぐに見つかったが、注意力が無くなりすぎだ。水様便が続いて脱水症状に陥り、注意散漫になっている自覚はあったが、こんなことになるとは・・・。このレストランではサブバッグとともに傘も忘れていた。三点あった荷物が一点になっているのに、バス停でも気づかず、バスで荷物を網棚にあげた時にも気づかないなんてあり得ないと思うが、それが事実。バスでスマホを充電しようと思い、充電ケーブルを入れていたサブバッグがないことにやっと気がついたのだ。うーーーー、情けない。
時間つぶしで、ツーリストインフォメーションで休ませてもらう。水下痢が止まってからも、移動が怖くて水分をとっていなかったが、ここで開き直り、持っていたボトルの水を全部飲んだ。特にトイレに行きたくもならず、さっさと水分をたくさんとれば良かったと後悔するが、仕方ない。
ツーリストインフォメーション内には色々と土産物が置いてある。この中で目に付いたのが、"From Lofoten, weed love" の文字。そこには海藻を採る女性の写真が添えられている。海藻を分解する酵素がないヨーロッパ人は、海藻が食べられないと言われているが、ロフォーテン諸島では食べているのだ。海藻ふりかけやトリュフ入りワカメ塩などが土産物として並んでいた。
荷物があるので交代で街を散歩するが、気分は晴れず。空からも晴れ間がなくなってしまった。
15時45分のバスでレクネスに向かう。レクネスから先の乗り継ぎがないので、20時発のバスとレーヌ到着は同じだが、明るい時間に少しでも移動し景色を見ようと思ったのだ。
暗いので写真映えはしないが、紅葉とフィヨルドの海や氷食で急峻な山々の景色は本当に美しく、目を見張るものがある。
沿線の村は少なく、バスはずっとガラガラのまま。バス代は非常に高いが、一日数本でもバスを維持していてくれてありがたいところだ。
レクネス到着は17時10分。そして次のバスの出発時間である21時40分までここで時間を潰さねばならない。18時以降に開いているカフェはなく、夜まで開いているレストランさえ数軒のみ。クチコミ記事を見てスカンディック・ロフォーテン・レクネス ホテルにあるレストランに行くことにした。夕食は18時からのようなので、しばらくバス停近くで時間潰せる場所を探したが、寒くてすぐにホテルに向かってしまう。ロビーで開店まで休んだ後、レストランに入る。干しダラの料理を注文。妻は厨房に行ったまま戻ってこず。料理を作るところをずっと見せてもらっていたそうだ。
完成した料理を見せるシェフ。
ずっと絶食していたのに急にたくさん食べるのも怖いので、ここでも私は注文せず。数口で十分だろうと思っていたが、3分の1くらい食べたかも。干しダラはもちろん付け合わせも美味しかった。水分も結構とったが、もう大丈夫そう。明日からは普通に食事が出来そうだ。
バスの時間が近くなるまでレストランで休ませてもらい、無事に21時40分のバスに乗車する。真っ暗な中、バスはひた走り1時間と少しでレーヌに到着する。
ここのホテルも無人チェックインだ。しかし、ホテルの中が迷路のようになっており、全然部屋が見つからず。無人なら申し少し説明を分かりやすくしてほしいところだ。泊まっている人に手伝ってもらい、なんとか見つかったが大変だった。写真のリビング・キッチンとトイレシャワーが3部屋で共同というユニットがいくつもある宿で、共有スペースが使いやすそうで良い宿だ。