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イースターの長い休み

グアテマラ

 中米のベリーズにメキシコから陸路入国、手続きの間にスコールとなり、びしょ濡れになった。一度は止んだが、中心都市ベリーズシティーに着いた途端に、二度目のスコール。バスターミナルから動けずに入った食堂で、二日後から五連休であることを示すカレンダーに気がついた。イースターだ。
 キリスト教世界における最大の行事はクリスマスではなく、このイースターである。処刑されたキリストが復活したことを祝う行事で、日本では復活祭と呼ばれている。普通は、前後四、五日が休日となるが、中には聖週間と呼ばれるイースター前の週とイースター翌日を合わせ八日の休日が続く場所もある。日付は一定せず、今年は四月十一日がイースターで、すでに聖週間に入っている。
 特別な休みだからバスも止まるといわれ、予定が狂った。ベリーズは、サンゴ礁の離島以外に見所がないといわれている。小さな国でも最低三泊はしようと心掛けて旅をしているが、泳げない天気で一週間の足留めは避けたく、一泊だけで先に進むことに決めた。
 見所がないと聞いていた街だが、歩くと意外におもしろい。建物の大半が木造二階屋で、十九世紀の街並みがそのまま残っている。イギリスの植民者達が建てた英国式コロニアル風街並みは、スペイン式コロニアル風が多い他の中南米諸国の古い街などとは趣がかなり違っていた。小説の世界に迷い込んだような気になる街なのだ。
 気に入ったので一週間滞在しても良いかと再び迷ったが、イースター行事で有名なグアテマラのアンティグアを目指し、先へ進んだ。


産経新聞連載
「(新)一国一景」
2004年4月8日分

エッセイ