ハイウェイ沿いの空き地にテントを張っていたが、寝ている間は車も来ず、よく眠ることが出来た。6時に起きたが、40キロ先の国境が開くのは8時から。早過ぎるので周辺を少し散歩し、朝食をとる。
7時20分に出発。17キロ、約30分走った所がテイラーハイウェイとトップオブザワールドハイウェイの分岐点。ここからカナダのドーソンシティーまで続くトップオブザワールド(Top of the World)ハイウェイは、標高の高い山岳地帯を走ることからその名が付けられ、絶景の道として知られている。ハイウェイといっても全線未舗装で積雪期は閉鎖されてしまう。今年の雪が融けて全線オープンになったのは5月24日、僅かひと月前のことである。今年の閉鎖予定は9月15日、一年の3分の1しか通行できないハイウェイだ。
トップオブザワールドハイウェイに入ってすぐ、前方にシカを発見。最初は横を向いていたが、車に気づいて逃げ出してしまい、写真は後方からとなってしまった。あとでドーソンシティーのインフォメーションで聞いたところ、蹄の大きさなどからトナカイで間違いないそう。トナカイは飼われているものしかまだ見ていなかったので、もっとちゃんと見たかったなぁと思う。しかし未舗装道で飛ばしていたので急ブレーキをかけるわけにも行かず、仕方ない。トナカイは雌雄どちらにも角が生える唯一のシカだそう。ただしメスはこの時期角を落としているという。

8時過ぎにリトルゴールドクリークの国境に到着。左がアメリカのイミグレーション、右がカナダのイミグレーションだ。

出国は何の手続きもなく、そのままカナダ入国手続きをする。パスポートを見せ、いくつかの質問を受ける。ここで薪を持っていたのが引っ掛かり、薪は没収された。カナダは薪に付く害虫に対してシビアなのだ。とはいえ対応は非常にフレンドリーで、荷物の検査もなし。10分ほどで入国手続き完了。アラスカとユーコン準州は1時間の時差があり、再出発は9時20分だ。
国境から3キロ走った辺りが、この道で一番標高が高く、道路脇には雪が残っている。とはいえ、標高は1400メートルにも満たない。名前の由来からしてもっと高度は高いのだと思っていた。景色は高緯度地域ゆえの高原風景で美しい。また尾根筋に近く谷底は雲海で見えないこともあり、トップオブザワールドという雰囲気はある。

全線未舗装とはいえ、道路状況が予想外に良い。長く続く未舗装道は走ったことがなく心配していたが、楽しいままに国境から107キロをノンストップで走り切った。キャンプ地からは145キロ。何時間かかるのか想像もつかなかったが、11時前にユーコン川をフェリー乗り場に着いて、正直拍子抜けだ。
川霧に霞む対岸ドーソンシティーにはフェリーで渡る。

フェリーは1船しかないが、これが24時間行き来している。しかも無料! ありがたいことだ。

11時25分にドーソンシティー到着。休憩がてらまずはツーリストインフォメーションへ。明日から走る予定のデンプスターハイウェイについて質問すると、昨日から今朝までクローズだったという。山火事のせいだ。今日走ったトップオブザワールドハイウェイも数日前に山火事でクローズしていたという。昨日雨だったのでしばらく大丈夫そうみたいなことを言われ、ホッとする。後で調べたらアラスカ側も頻繁に山火事が発生していて、昨日走ったトックの手前も一昨日はクローズしている。またどこかで計画は狂いそう。これでは先々の宿予約ができない…。
ドーソンシティーもゴールドラッシュによって生まれた町だ。1896年にここで金が発見され、それは北米最大級のゴールドラッシュを引き起こした。1898年にはユーコン準州が創設され、当時カナダ西部で最大の都市にまでなったここが州都となる。しかし、ゴールドラッシュはその翌年に終焉し、ドーソンシティーは一気に寂れていく。1952年には州都もホワイトホースに移された。現在は観光産業を主とする人口千数百人の地方都市だ。
博物館もあるがインフォメーション内にもゴールドラッシュ時代の展示があり、その中でも金のブロックを持つことができるようになっているのが素晴らしい。持ってみたが、重くてビックリ、腰を痛めそうだった。

スーパーで少し買い出しをし、エルドラドホテルにあるラウンジに行く。ここで昼食だ。

まずはビーフディップに付け合わせのフレンチフライ。ビーフディップは、ローストビーフサンドと付け汁がセットになっている。

初めて食べるのでディップの仕方が分からず、店員に聞く。特に決まりはないが、サンドごと全部つけてしまう人が多いとのこと。付け汁は濃厚な肉汁に醤油を足したもので、パンに浸み渡ると非常に美味しい。

もう一品は伝統的ベニー(Traditional benny)に付け合わせはハッシュブラウン。伝統的ベニーはイングリッシュマフィンにハムとポーチドエッグを乗せ、オランデーズソースと呼ばれるクリーミーなソースをかけたもの。

ラウンジなので食後もゆったりしている人が多い。宿泊予定のホテルのチェックイン時間がまだなので我々ものんびり過ごした。
14時になり、チェックイン開始時間の1時間前だが、宿泊予定のバンクハウスへ。無事部屋に通してくれて、一休み。本日の走行は145キロだった。個室だがトイレシャワーが共同の安ホテル。バイクで旅する人に人気の宿だそうで、宿の前にもバイクが並ぶ。

16時、明日に備えて休んでおくという妻を残し、街の散歩。ゴールドラッシュ時代の写真とよく似た街並みだが、実際には度重なる火災と洪水で昔の建物が残っているわけではない。新しい建物を建てる時に伝統的なものに似せた街づくりをしてきた結果が、今の街並みである。にもかかわらず街全体が、2003年に世界遺産登録されたトロンデック・クロンダイクに含まれている。そして観光客であふれていた。確かに19世紀の街並みの再現だが、これが世界遺産になるのかと思ってしまう。

各建物の歴史を冊子にまとめたセルフウォーキングツアーの冊子を手に色々歩く。町の中心部でも多くの通りが未舗装で、雨のせいでぬかるんでいるところも多いが、木制の歩道が続いており、快適に観光が続けられる。

ユーコン川沿いは公園になっており、様々なモニュメントがある。

テーブルセットもあり、のんびり町の雰囲気を楽しむ人が多い。

また焚き火の出来る場所もあり、夜に火を囲むのも楽しそう。

ユーコン川沿いの遊歩道にはジョギングをしている人もいる。川の水が濁っているのが残念だ。ユーコン川のカヌー下りにあこがれた頃もあったが、ゴールとなるここの川が濁っているのは興ざめだ。

町の後方に見える地滑りあとは、その形がムース(=ヘラジカ)の角に似ていることからムースハイドスライドと呼ばれている。昔は人食い人種がおり、この地滑りで彼らが絶滅したという伝承があるらしい。この地滑りあとも世界遺産だそうだが、その説明を読んでも世界遺産に登録された理由は全く分からずだ。

とはいえ再現された古い街並みを見ながら歩くのは楽しいものだ。妻にも見て欲しいと思い、いったん宿に戻ったあと妻を連れて再び散歩。最後に小さなスーパーで買い出しをし、宿に戻る。
スーパーのデリで買ったもので軽い夕食をとり、後は寝るまで調べもの。