今日は移動が長いし見どころも多いので、暗い時間に起床した。朝食は付いていないので、手持ちの食料で軽く腹ごしらえ。
出発は7時50分、すでに明るくはなっているが、まだ日の出前だ。日の出時刻の8時はシンシナティの中心部に差し掛かったころで、日の出は見えず。高層ビルの窓に朝日がに反射して、日が出たのを確認した。
シンシナティは州境のオハイオ州に面している。橋を渡るともうケンタッキー州だ。
ケンタッキーといえばバーボンウイスキーの本場である。代表的なアメリカの蒸留酒であるバーボンは、トウモロコシを主原料とするウイスキーで、ケンタッキー州で18世紀に生まれている。2018年現在、ケンタッキー州には68のウイスキー蒸留所があり、そこでバーボンの全米生産量の95%蒸留されている。蒸留所巡りをするコースはケンタッキーバーボントレイルとして、人気となっている。数ある蒸留所の中でも人気ナンバー1なのが、レキシントン近郊にあるワイルドターキー蒸留所だ。そこを目指し南下する。
道々に馬に関する看板が目立つ。ケンタッキー州は馬の繁殖と競馬でもよく知られているのだ。中でもレキシントンは世界の馬の首都(Horse Capital of the World)と呼ばれており、馬関係の見どころがたくさんある。一番よく知られているのが、レキシントンとワイルドターキー蒸留所の間ぐらいにある競馬場で、計画に入れるかどうか迷った場所でもある。時間の都合で訪問は諦めていたが、看板を見て妻が馬を見たいと言いだしたので、立ち寄ってみることにする。そのまま運転を中断せず、ナビの行き先を競馬場に妻にしてもらったはずが、着いたのはケンタッキー・ホースパークだった。ここは年間で100万人も訪れる人気ある馬のテーマパークだ。ここは見るもべきのはたくさんあるが、その代わりに入場料が高い。払えないことはないが、高いとざっと見て出る気にはならない。入れば時間が無くなるのは見えているので、外のモニュメントをいくつか見学しただけ。すぐ先に進む。
一応馬も少し見ることが出来たので、先に考えた競馬場に立ち寄るのは止め、ワイルドターキー蒸留所に向かう。到着は10時15分。ここは人気の観光スポットなので次々と人がやってくる。
受付を通って、奥に進むと試飲会場。大盛況で皆さん本当に楽しそうだ。
試飲のバーボンは会場の外で飲むこともできる。ケンタッキー川の渓谷にベランダは面しており、走ってきた車道と鉄道の2本の橋が見えていた。
2階のバーにはバーボン蒸留の装置や樽がディスプレイしてあり、おしゃれな場所だ。
ゲスト駐車場の奥には大きな蒸留工場が見えている。これ以外にもいくつも蒸留設備が敷地内に点在する巨大な蒸留所だった。
スーパーに立ち寄った後、バーズタウンを訪れた。ケンタッキーバーボントレイルの公式出発点として人気のある都市でここにもいくつかの蒸留所がある。12時の到着となったので、まずは昼食。訪れたのは、この地でバーボンが生まれた18世紀に営業を始めたというタルボットターバン。ターバンは居酒屋を指す言葉だが、酒場と食堂と宿を併設するのが伝統的なスタイルだ。ここも1階がバーとレストラン、2階がホテルになっている。
入ってすぐ右がバーで、お昼なのに皆さん飲んでいて、空き席がほとんどないくらい賑わっている。アメリカで一番古いバーボンバーなのだそう。まあバーボンが誕生した頃から続く店なので、当然か。いつの時代か分からなくなりそうな雰囲気もあり楽しい店だ。
バーのテーブルでも食事ができるが、飲むのが主でなければ、ちゃんとレストランも別にある。メニューは一緒で料理は同じ厨房から運んでくる。こちらでもバーボンが飲めるが、雰囲気が全然違う。古い道具類の展示が博物館のよう。また、ウエイターが素晴らしい対応で、本当に気持ちよく食事ができる店だ。
食べたのは、ホットブラウン(右)とバグー(Burgoo)。
ホットブラウンは100年ほど前にケンタッキー州のブラウンホテルで考案された人気の郷土料理だ。トーストの上にチーズを溶かしたソースをかけ、その上に燻製七面鳥とベーコン、トマトなどを乗せたオープンサンドイッチだ。
バグーも発祥がケンタッキー州の郷土料理だ。参加者がそれぞれ1つ以上の材料を持ち寄る社交行事として皆で作るのだそう。具は自由で、入手可能なあらゆる肉や野菜を入れることができるシチューだ。スプーンが立つくらいとろみを帯びるのが良いとのことで、レストランでもスプーンが刺さって出てきた。
美味しい料理を堪能した後、これから向かうマンモスケーブのツアー予約をウェブでしようとしたら、もう間に合わない時間のもの以外が完売していた。朝見た時は十分空きがあり、到着時間が見えてから予約しようと考えたのが、失敗だ。洞窟に入れないと時間はかなり余るので、バーズタウンを散策することにする。
食事をしたタルボットターバンは街の中心であるコート広場の中心にある建物は旧裁判所。その一階が観光案内所になっており、市内地図やケンタッキーバーボントレイルの資料をいただいた。
バーズタウンはケンタッキー州で最も古い町の1つで、国家歴史登録財に登録されている建物が200棟以上並んでいる。その一つである下の建物は1840年にホテルとして建てられたもので、1895年からはバーズタウン最初の市庁舎として利用された。
人気の観光地で、観光用の馬車も時おり走っている。
土産物屋も多いが、バーボンの街だけあってバーボン専用の土産物屋も並んでいる。
オスカーゲッツバーボン歴史博物館はバーボンの歴史が良く分かる素晴らしい博物館。コルクの皮からコルクの栓を抜いている見本を見るのは初めてで興味深いところだ。
各年代の蒸留機器も集められており、面白かった。
バーズタウンを出発したのが14時20分。洞窟には入れなくなったのでマンモスケーブ国立公園へは行かないことも考えたが、予約の宿はその近く。世界遺産にも登録された大きな公園なので見どころは他にもあるだろうと訪れることにする。
マンモスケーブ国立公園のビジターセンターに着いたのは15時半。入口にある電光掲示板を見ると、ウェブの今日のツアーリストにはなかった15時発のマンモスパッセージだけは満員表示になっていない。空きがあるまま時間になって出発したんだろうなぁとちょっと悲しくなる。
地図をもらって散策路を歩こうかとインフォメーションカウンターに行くと先ほどのツアーがまだあるという。???。
入国後ここまで時差がなかったのですっかり忘れていたが、ケンタッキー州東部はアメリカ東部時間を採用しており、西部はアメリカ中央時間を採用しているのだ。バーズタウンとは時差があり、今はまだ14時半、15時のツアーに間に合う。空きもあるというのですぐに申し込んだ。すべてのツアーが売り切れたために、追加で設定したツアーらしい。
ビジターセンター前でまずブリーフィング。マンモスケーブは総延長が世界でもっとも長い洞窟群で、1941年に国立公園に指定され、1981年には世界遺産登録もなされた。知られているだけでも640キロ以上の通路がある。洞窟内へはツアーでないと立ち入れない。洞窟内には川も流れており、以前はボートツアーも人気だったが、環境保護のために現在ボートツアーはなくなってしまった。ツアーは家族向けの整備したコースを歩くだけのものから、狭い通路を探検のように進んでいくものまで、各種存在している。参加するマンモスパッセージツアーは初めての人向けの基本的なツアーとなっている。
ビジターセンター前から洞窟入口までは徒歩で移動。洞窟入口で最終的なツアー説明を受ける。
ここが洞窟への入口で、階段を下りて中に入っていく。
通路は整備されており、アップダウンもほとんどなく非常に歩き易い道だ。途中、天井にコウモリがいた。かつて洞窟内には1000万匹以上のコウモリが生息していたと推定されているが、現在は数千匹まで減っており、保護されている。
洞窟内で活動していた人間の痕跡は5000年前のものまでさかのぼり、墓地も発見されている。
一番奥の広い場所で、しばらく自由行動の時間となった。今まで訪れた多くの洞窟にあった鍾乳石が見当たらないなと思っていたが、もう少し奥にはたくさんあるらしい。
ツアーは約1時間で終了。歩いて少しお腹が空いたので、買ってあった食料を少しだけ食べる。ピメントチーズはアメリカ南部料理の一つで、チーズ、マヨネーズ、ピメントから作られるスプレッド。食パンに塗ると非常に美味い。
ベネディクティンは、キュウリとクリームチーズで作られたスプレッド。これもケンタッキー州で100年ほど前に考案された郷土料理だ。チーズとマヨネーズが主体なので美味しくはあるが、キュウリ味が結構強く、私としてはピメントチーズの方が断然好きな味。
16時半頃にマンモスケーブ出発。出発してすぐ、まだ公園敷地内を走っている時に鹿を見かけた。
山から下りてきて、酒屋に立ち寄る。蒸留所でも、バーボン専門の土産物屋でも買わなかったが、やっぱりバーボンを飲んでみたくなったのだ。ここもケンタッキーバーボントレイルの一角だけあって、バーボンだけでものすごいたくさんの種類が売られている。せっかくバーズタウンを訪れたので、バーズタウンのバーボンから選んだのが、エヴァン・ウィリアムズ。ウェールズ移民であるエヴァン・ウィリアムズがケンタッキー北部のルイビルで蒸留所を作ったのが、1783年。これはケンタッキー州初の蒸留所で、バーボンウイスキーの発祥だ。瓶のラベルにはケンタッキー初の蒸留所と大きく書かれている。後で調べたところ、日本でも売られているジムビーンに次いで世界で2番目に売れているバーボンだった。しかしバーズタウンのバーボンのつもりだったのに、蒸留所は今もルイビルにあり、瓶詰めがバーズタウンなのだった。
酒屋と併設のガソリンスタンドで給油し、宿のあるホースケーブへ。到着は17時20分。本日の走行は255マイル、410キロだった。
夕食は、3種類のスプレッドをつまみにバーボンパーティ。マンモスケイブで食べた2種類に追加して、ギリシャホムスも一緒に食べた。バーボンはストレートで飲んで、その後チェイサー(水)を飲むのが正しい飲み方。こうしたら結構おいしく感じる。試しに水割りも作ったが、あまりおいしく感じず。