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~クリミア、北コーカサス、カラムイク~
9日目 マイコープ→チェルケスク
アディゲ共和国のマイコープも本日の目的地カラチャイ・チェルケス共和国の首都チェルケスクもコーカサスの北を走るメイン道路から少し山側に位置している。そのために直で2都市を結ぶバス路線は少なく、一日2本しかない。一つは山間の村々をつなぐローカルな路線で299キロと遠回りで時間がかかる。もう一つはメイン道路経由の路線で247キロと距離は短く道も良いが、出発時間が遅く、チェルケスク到着が夜遅くなる。夜遅くなるのは嫌なので、山道のバスを選んだ。チケットは到着した日に買ってあったので良い席に座れたが、10数人乗りの小型バスなのに立ち客が大勢いた。途中の乗り降りも多いが、基本的に短距離乗車の人が多い。
カラチャイ・チェルケス共和国入国時に検問があり、パスポートチェック。レジストレーションをしていないため、バスを降ろされ、オフィスに連れて行かれた。規則は“同一都市に1週間以上滞在する場合にはレジストレーションが必要”というものなので、我々にレジストレーションする義務はない。とはいえ、していなかったために入国から1週間たっていないのに罰金を払わされたという話も聞いていたので少し緊張する。といっても警官たちの雰囲気は和やかで、問題なさそう。同じ都市に1週間以上滞在していないことを示すホテル予約の証拠や乗ったバスチケットなどを用意したが、見せる必要もなく、通過は許された。
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マイコープを出てすぐにコーカサス山脈の雪山が見えており、これからどんどん近づくと期待したが、中々雪山は見えず、のどかな景色が続く。
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カラチャイ・チェルケス共和国の最初の村クルジノボでしばらく停車する。時刻表より1時間ほど遅れている。昼を過ぎ、空腹だったが、運転手や他のずっと乗っている乗客も食事をしない。この先で食事休憩があるのかと思っていたが、後からラマダン期間中だと思い出した。数軒先に見えていたカフェが開いているかどうか見に行けば良かった。
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カラチャイ・チェルケス共和国は、南部の山間部に多いトルコ系のカラチャイ人と北部に住むコーカサス系のチェルケス人=アディゲ人の名を冠したロシア連邦内の共和国で、約4割を占めるカラチャイ人が一番多く住んでいる。民族の同一性をソビエトによって分断されたアディゲ人と同様に、カラチャイ人も隣のカバルダ・バルカル共和国に居住するバルカル人と同一民族で分断されている。カラチャイ・チェルケス共和国にある市は2つだけで、一つは首都のチェルケスク、名前から分かるようにチェルケス人の多い都市である。南部にはカラチャエフスクというカラチャイ人の市がある。交通の利便性を考えてチェルケスク滞在を決めたが、バスが南部の山越えルートならカラチャエフスクにすれば良かったと少し思った。
ヨーロッパの最高峰であるエルブルス山は、カラチャイ・チェルケス共和国とカバルダ・バルカル共和国の境界に位置し、両国とも観光客が集まるのはエルブルスのふもとの村となっている。時間があれば山を見に行きたいが、カラチャイ・チェルケス共和国滞在中はラマダン明けの祭があるので、行くならカバルダ・バルカル共和国に移動してからとなる。
途中で1時間遅れていたバスだが、後半はスムーズに走り、遅れを取り戻した。宿泊ホテルはバスターミナルからかなり離れているが、南からのバスだとホテルの前を通るので、近くで降りることができた。予約サイトの表示位置が間違っており、わき道を探して見つけるのに手間取ったが、ホテルはバス道に面した新しい建物で、部屋も非常にきれいだ。
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明日はラマダンの最終日、日没時間からがイスラム歴の新年で、イスラム教徒にとっては最大の祝日となっている。ホテルの近くに国で一番大きなモスクがあるので楽しみに訪れたが、カギが閉まっており、中にも入れず。
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仕方ないので街の中心に向かって散歩する。この街はロシア人の比率も高いし、チェルケス人の一部はキリスト教に改宗している。ほぼ100パーセントがイスラムのカラチャエフスクにすれば良かったなと少し後悔。教会は開いていたが、それよりも明日ムスリムたちが集まる場所が気になって中も見ずに先へ進む。
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ムスリムが集まっているモスクは見つからず、夕食はレストランへ。まずはロシアではよく注文する加工肉盛り合わせの前菜を注文した。外観はムスリムの店ではないと思っていたが、メニューに酒類はなし。加工肉も豚はなく、牛とチキンのみ。
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夕食後、もう一度モスクを訪れてみた。先ほどは鍵が閉まっていたが、ちゃんと開いていた。礼拝が終わった後で、ラマダンの日没時にふるまわれる水とナツメの片づけをしているところだった。
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モスクの周りには先ほどはなかった車がたくさん駐車しているのに、モスク内にはほとんど人がおらず。不思議に思っていたら、すぐ近くの大ホテルのレストランが貸切になっており、パーティーをしている。テレビカメラも入っている。前方で演説しているのは国で一番偉いイスラム指導者だそうで、ラマダン終了の前夜祭のようなものらしい。
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パーティー会場にいた人から明日は市の中央広場で行事があるから見に来れば良いと教えてもらえた。これでラマダン明けの日にムスリム国を選んだ甲斐があるというものだ。