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2019 サウジアラビア
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自由な旅が解禁になったサウジアラビアへ
23日目 サカカ-ジュッバ-ハイル
9時半に出発。サカカの街でガソリンを入れるのを忘れたが、ドマット・アルジャンダルで入れれば良いとそのまま走る。しかし、今日向かうハイル方面への分岐はドマット・アルジャンダルの街の手前で、そこまでにガソリンスタンドはなかった。分岐からしばらく進むもガソリンスタンドがなく、一旦停止し、地図で検索する。次のガソリンスタンドまでギリギリそうで、迷ったが、安全策を取ってUターンし、ドマット・アルジャンダルへ。ガソリンを満タンにしてから再出発だ。分岐の辺りにはベドウィンのテントが散見されたが、良く見ると観光用のバギーなどが見える。観光施設のようだ。
しばらく進むと近代的な鉄道駅が見えた。首都リヤドからヨルダン国境に延びる計画の鉄道の現在の旅客終着駅アルジョウフだ。サカカやドマット・アルジャンダルの人々が使うのだろうが、砂漠の中にある駅で、街までの公共トランスポートはない。サカカまでは60キロもある。こんな不便な駅で一日一往復しかない鉄道なんて誰が使うのだろう?
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13時前にジュッバに到着。世界遺産「サウジアラビアのハイール地方のロック・アート」のある村だ。先に昼食をとりたかったが、店はなく、そのまま世界遺産のオフィスに到着した。さっさと見に行きたい気持ちがあったが、まずはオフィスに招かれ、コーヒーやナツメをいただく。
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世界遺産はさすがに有料かなと思ったが、入場料は無料で、ミネラルウォーターなどもいただく。20平方キロ近い広大な敷地であるが、ここはフェンスがあり、開けてもらわないと中には入れない。歩道や階段を整備している見学コースはごく一部だ。階段は崖上の岩絵を見やすいように数ヶ所あるだけ。他の場所は自由に崖を登って見学することが出来る。
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入ってすぐに素晴らしい岩絵が、残っており、興奮してしまう。ここでも見学者は皆無で、自分たちだけで自由に見て歩けるのだ。古代文字が描かれている場所も多い。
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数千年に渡って描かれた絵なので、時代によってデザインも色々だ。様々な動物はもちろん、数メートルある巨人の絵や骨だけの人の絵もある。体はきれいに描いているのに、頭は線だけの人がいくつかあり、不思議な感じがする。
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様々なスタイルの狩りの様子が描かれており、狩猟生活をしていた当時の様子がうかがえる。
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数えきれないほどの岩絵を次々に見て、かなり疲れた。絵は密集しているので歩いた距離は短いが、絵について色々考察しながら集中したので、精神的に疲れた。20分くらいで見れるよと言われた見学コースに、1時間以上かけ、楽しんだ。世界遺産の公式サイトから地図をダウンロードしてあり、コース外の岩絵も見に行こうと準備していたが、もう十二分に見た感じ。ずっと行ってみたいと思っていたタッシリナジールやラスコーの岩絵さえ、もう良いかなという気になるほど、ここの岩絵を堪能した。
満ち足りた気分でオフィスに戻ると一足先に戻っていた妻は応接室でくつろいでおり、私もそこに仲間入り。
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コーヒーや紅茶、ナツメだけでなく、パンやチーズもいただくことができた。岩絵を見た興奮が収まってくると強烈に空腹を感じており、これは助かった。パンはストーブの上で炙るのがサウジスタイル。電気ストーブも炙れるように上が開いているのだ。
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オープン時間は15時まで。時間ぎりぎりまで食事をさせてもらい、その後は外のベンチで食事を続ける。職員の人が帰る時に、村の中の私設博物館の存在を教えてくれた。おもしろいから時間があるならぜひ行くようにと。
村の中は道が細く入り組み、現在地が分からなくなりそうだったが、何とか私設博物館に到着する。ここも世界遺産同様で、見学の前にまずコーヒーを飲みなさいと外の席に案内される。そして、コーヒーが来る前にアザーンが鳴りだし、お祈りタイムに入ってしまった。これがサウジアラビアの常であり、焦っても仕方ない。博物館の外観を見ながら、ひと休み。
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お祈りが終わるとコーヒーよりも先に博物館に案内された。しかし、展示物は素通りし、一番奥の建物に。そこが応接室になっており、中には囲炉裏! 囲炉裏がある天幕に招待されたことがあったが、実際に火を焚いている囲炉裏が建物内で使われていたのは初めてだ。ここでコーヒーを入れていただき、ナツメもいただく。
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香木も焚いてくれる。
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薪を燃やしているので、煙が出るが、天井には穴がいくつも空いており、煙たくはない。天井近くでは、煙で光の道が美しく輝いている。
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コーヒータイムが30分近く、その前の待ち時間を入れると博物館に着いてから見学が始まるまでに50分くらいの時間が経過している。これがサウジアラビアの観光ペースだ。
銃や剣が、コーヒー道具と同じように大事に飾られているのが、いかにもサウジアラビアらしい。
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そして価値のなさそうなガラクタが同列に並んでいるのもサウジアラビア。
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伝統的な食糧倉庫。こんな貯蔵の仕方でネズミとかにやられないのだろうか? 展示物は模型でなく、すべて生の食料品である。
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井戸にはちゃんとラクダが繋いである。これまでいくつも古井戸を見てきて、ラクダを使って水を汲んだというのを聞いてきたが、実際に見るのは初めてだ。
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ラクダは水を汲むロープに繋がれ、井戸を背に進む。
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敷地の端まで歩くと水の入った皮袋が上がってきて、自動的に横になって水が出てくる。
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すぐにラクダはUターン。
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皮袋は井戸の底に戻って行き、特に揺らさずとも水が満たされる。
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ラクダは井戸の前でUターンするだけで、2度目のくみ上げが始まる。単に行き来するだけでどんどん水は汲みあがる。
休息を与えられると懐いてくるかわいいラクダ!!
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ラクダの働きによって乾いていた水路に水が流れ出す。予想以上に効率の良い汲み上げに、感動する。
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博物館の見学が終わると、時間はあるかと尋ねられた。まだ見せたい場所があるという。離れた場所なので、車で移動。馬を飼育している場所に連れて行かれた。馬よりも牧草を得るためのスプリンクラーが気になる。水を出しているのを近くで見るのは初めてだ。
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最後に連れて行かれたのは、親族の集まる天幕だ。ここでも薪でコーヒーを入れてくれた。毎日仕事が終わると親族の男たちはここに集まって話をする。それが彼らの暮らしなのだ。
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そのままいたら夕食もいただけそうだったが、ジュッバに宿はないので、120キロ先の州都ハイルまで進まねばならない。日没の礼拝を機に、礼を言って出発する。
19時にハイル到着、久しぶりの大きな街だ。ホテルでひと休みし、夕食に出る。朝も昼もまともに食べていないので、夕食はしっかりとお米が食べたいところだ。大きな街だけあってすぐにレストランは見つかり、今日も鶏料理をいただく。働いていたのはアフガニスタン人。日本人と分かると喜んでくれ、茄子料理やフライドポテトをサービスで付けてくれたので、お腹いっぱいだ。