2人の世界旅 日々の記録

4年3ヶ月、1日も欠かさず綴った旅日記
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ジンバブエ>2008年09月16日(Tue)
ハラレ
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■ハラレの1日
南半球の9月は春。ハラレHarareの街では、春を告げる -まるで日本の桜のような- 花、「ジャカランダ」が、美しい紫色をいっぱいに湛えています。

ハラレ

朝はまずバスターミナルへ行きました。次の訪問国マラウィへ行くバスを探すためです。ついでに両替も。ジンバブエとマラウィは接していないので、「ちょこっとザンビア経由」か「ちょこっとモザンビーク経由」のどちらかで移動することになります。モザンビークのほうがビザ代が安いので、私たちはモザンビーク経由の会社を探しました。でもその会社のチケットは別のバスターミナルへ行かないと買えないと言われました。

そして和人が別ターミナルへ行っている間に、あづさは日本大使館へ。この国の経済のことを教えてもらい、医務官の先生と医療のお話しをするのが目的です。

■やっと知った、この国の経済の一端
旅した当時、銀行公定レートでは1USドル=60ジンドル(ジンバブエドル)、闇両替レートだと1USドル=400~450ジンドルくらいでした。

ハラレでは食堂で庶民食の最も安いもの(サザに煮込みを添えたもの)を注文しても、1500ジンドルはしてしまい、闇レート換算でも400円もしてしまうのです。他の国でなら50円で食べられるものに、です。

昨日の日記に書いたチップス(フライドポテト)は1パック3000ジンドルでしたから、私たちは、この国の物価は異常に高いと思っていました。

今日日本大使館で教えてもらったこと。「この国で銀行口座を持っている者(裕福層)は1USドルを30000ジンドルとして引き出せる」。・・・え? 何それ? しばし、固まってしまいました。続いて怒りすら沸いてきました。

[1.裕福層のレート]:1USドル=30000ジンドル
[2.闇両替のレート]:1USドル=400~450ジンドル(旅行者や庶民はここに該当、ただし違法)
[3.公定でのレート]:1USドル=60ジンドル(旅行者や庶民は本来ここに該当)

1と2にざっと70倍の開きがあり、2と3にざっと7倍の開きがある。すなわち、1と3にはざっと500倍の開きがあるのです。

なお、政府が認めているのは1と3です。なんか、「自分たちは甘い汁をずずずぅ~っと吸って、あとの輩は知らんぷり」っていう空気がぷんぷんと感じられるのは、何故? 庶民や旅行者、完全になめられてますよね?

・・・でも、これで、今までの不思議が分かりました。

昨日、チップス(フライドポテト)が3000ジンドルで売られていました。「こんなちっちゃいポテトに800円は出せないわ!!」とあづさは購入できませんでしたが、1USドル=30000ジンドルで引き出せる人々 -具体的には、政府関係者や企業の役人たちといった裕福層- には、たったの0.1USドル、すなわち10円ちょっとでこれを買えるのです。

先ほどの1500ジンドルの食事も、庶民は400円を払うところ、裕福層は5円で食べられるのです。
1個100000ジンドルのチーズバーガーも、庶民には25000円で、裕福層には300円なのです。

  ・・・えーと、何か間違えていませんか? ジンバブエさん?

   (十分間違えているから青天井のインフレが起こっているのですけど)


「今すぐこの国を出てください。破産しますよ。」とは、日本大使館領事の声。
ちなみに日本大使館職員はこの国で銀行口座をもっているので、安飯は5円でチーズバーガーも300円で食べられます。

でも旅行者は、庶民は、その75倍の値段(公式には500倍!)を、払い続けなければならないのです。

ところで、インフレによる脅威のジンドル安が続き、昔日本円で約10000円となるよう設定されたパスポート作成料はいまや0.0001円です。「お金は要らないですから、1時間で新しいパスポートを作りますよ」と言ってもらえ、他で作ると2人で25000円はする10年パスポート増補(追加ページ)つきを、今日は1円の支払い(形だけの支払い)で作ってもらえたのでした。ビザやスタンプでいっぱいになってきていただけに、これは美味しい買い物だったかな。この国での今までの支払い損を、ちょっとは取り戻せたことでしょう。




ジンバブエ。

ローデシアという名の頃から少数派の白人政権だったこの国に、やがて黒人大統領が誕生しました。
黒人政権を台頭させる思想は当然のこと。十分納得できることです。
でも、あまりに強権政治の度がすぎました。白人の資産を強制剥奪し、外資系企業に株式を強制的に手放させ、結果として外資系企業は撤退していきました。
知識や技術を持つ白人が追い出され、残された黒人社会だけではかつての繁栄も維持できず、物資不足、国内企業倒産、失業者激増、おさまらない物価の上昇etc。
焼け石に水の法案が次々と制定されるも、政治も経済もまったく収拾がつかなくなっています。


当然、庶民の生活はどんどん苦しくなっていっているそうです。ジンバブエ人のお宅を間借りして長期滞在している日本人は、「大家は最近肉を買えなくなったようなんだ」と、塗炭の様子を話してくれましたっけ。その日本人も、「僕も先々月くらいまではチップス(フライドポテト)とかソフトクリームとか買えたけど、もう今では無理ッスね」と言っています。

青天井の物価上昇の様子は、そのことからも理解することができました。



この日記で記述した経済要素については異議もあるかもしれませんが、旅行者が数日間体験したことという視点で記載していますことを、ご了承ください。



今日、和人が、両手にいっぱいの野菜を買って帰ってきてくれました。やっと闇市場(マーケット)を見つけたのだそうです。そして野菜は、闇両替レート(庶民や旅行者の両替レート)でも30円とか50円とかいう、ほっとする価格で売られていました。ブラワヨBulawayoやマシンゴMasvingoでもこういったマーケットを見つけられたら良かったのですけどね、短期滞在の旅行者には難しいことですよね。

でも、表向き市場のスーパーマーケットで見た、穴があいてカビが生えたトマトやしぼんでしまったジャガイモ、ガランドウの陳列棚を思い出すと、この闇市場のほうが、遥かに明るく、生き生きとしているようにさえ思えます。



私たちは、苦しかったジンバブエの旅を、今日でおしまいにします。
でも、ジンバブエ人が抱える塗炭の苦しみや、同時に私たち自身が苦しかったことは、絶対に忘れないようにしなければと思います。

このような国の様子を見ることなど、一生旅をしていても、他の国では絶対できないでしょう。
そういう点では、こういった時期にジンバブエに来て良かったのかも。

国が滅茶苦茶でも、人が優しい。

その素晴らしさに、出会えたのですから。
本日の旅
行動 :ハラレ滞在、パスポート作成
朝食 :レモンティー/宿
昼食 :サザ(とうもろこし粉を炊いたもの)、Guru(グルー、牛の内臓の煮込み)/ハラレの食堂
夕食 :ごはん、ムリオ(インピータと呼ばれる大根の葉に味が良く似た野菜のみじん切りを少々のトマトと一緒にソテーしたもの)、インゲンにんじんソテー、野菜いろいろスープ、マドラ(いもむし)、とろとろオクラ/宿
宿泊 :パームロックヴィラPalm Rock Villa

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旅情報
1南アフリカランド=14円
1USドル=111円
1ジンバブエドル=0.26円

*ハラレで作るパスポート
10年パスポートと増補(同時にした)2冊分で972万ジンバブエ旧ドル。日本円に換算すると0.0001円くらいだった。他の国で普通に作ると2万5千円はするので、超お買い得である。旧パスポートと写真1枚で、作成所要時間は1時間。午後も受け付けてくれる。
ジンバブエもデノミしたので、この時点の公定レートから料金改定がなされるはず。しかし闇レートに換算すると約8分の1、つまり3000円で2冊作れるかもしれない。今年前半のペースで通貨暴落が続けば3ヶ月でパスポート代が1円以下に戻ってしまうだろうし、パスポート作成はジンバブエがお得?