抗マラリア薬(簡易)


※こちらは簡易版です。文字数少なく、見やすさを重視しました。
 「もっとちゃんと知りたいわ!」という人は、≫こちらの詳細版

 ワ ク チ ン に よ る 予 防 は 不 可 
マラリアにはワクチンがないので、予防には、蚊に喰われないといった基本的なことのほか、薬物が有効です。


 抗 マ ラ リ ア 薬 の 予 防 的 服 用 
マラリアには潜伏期があるので渡航が1週間以内なら予防服用は必要ありません。渡航先が都市なら迅速な治療が望めるので予防服用の必要性は低いでしょう。


 予 防 と 治 療 、 ど っ ち が 大 事 ? 
この項は、あづさ私感です。薬に効果100%ということはないので、薬の選択はマラリア原虫との組み合わせに依存する、“賭け”となります。

予防薬が効かない場合は、マラリアを発症し、治療することになります。まだ最悪の事態ではありません。しかし治療薬が効かない場合、致死的な結果を迎えます。だから、治療薬を真剣に考え、複数を所持しましょう。

なお治療薬は予防薬と違うものを持つこと。A薬で予防してマラリアを発症した場合、治療にA薬は効かないからです。また予防薬は、流行地域への日数にプラスして5~6週間分(薬によって異なる)を所持することを忘れずに。


「熱帯熱マラリアに効く薬は他のタイプにも効く」を覚えておくと、何かと便利です。

「蚊に喰われない」等の基本事項を割愛し、薬物の観点から言及いたしました。


 抗 マ ラ リ ア 薬 の 使 い 方 

■アトバコン・プログアニル合剤[マラロン]
【予防】:毎日1錠。流行地滞在の1~2日前から流行地を離れて7日後まで服用。
【治療】:1回4錠、1日1回、3日間服用。スタンバイ治療(自己服用による緊急対処)可。
【備考】:薬剤耐性熱帯熱マラリアに対する効果が高い。乳製品、あるいは食事とともに服用。同じ時間に服用。副作用:腹部症状、咳などがあるが軽微。


■アルテミシニン誘導体[アリネート、コアルテム、リアメ、アラキシン、コテキシン、アルテキン]
【予防】:予防薬としては使わない(使用経験が少ない)。
【治療】:コテキシン→初日2錠、2日目以降1日1錠7日間。リアメ→4錠を、0、8時間後、24時間後、36時間後、48時間後、60時間後の計6回投与。コアルテム→初回4錠8時間後4錠、2日目と3日目に4錠ずつ1日2回。いずれもスタンバイ治療可。
【備考】:耐性原虫がいないので効果が高い。WHOはコアルテムをスタンバイ治療薬としてトップ推奨している。主な副作用:頭痛、腹痛、下痢、吐き気、等。


■キニーネ[エビス]
【予防】:予防服用は不可。
【治療】:1回0.5gを1日3回、3~7日間経口投与。東南アジアではキニーネ耐性が高頻度にみられ、ドキシサイクリン[ビブラマイシン]などの併用が勧められる。
【備考】:マラリア4種に作用する。副作用:黒水熱(発熱、血尿等を伴う血管内溶血)、聴覚障害、食欲不振、めまい等。


■クロロキン[ニバキン、アラレン、アブロクロール]
【予防】:週に1錠。流行地滞在の1~2週前から流行地を離れて4週後まで服用。
【治療】:初回600mg、6時間後、24時間後、48時間後に300mgを投与、もしくは、1日目600mg、24時間後、48時間後に300mg投与。
【備考】:熱帯熱以外のマラリアでの急性期治療薬としては今でも第一選択薬剤である。明らかに熱帯熱マラリアが主流となるアフリカでは他剤を使用する。副作用として胃腸障害、平衡感覚障害、網膜障害など。


■クロロキン・プログアニル合剤[サヴァリン]
【予防】:毎日1錠。流行地滞在の1~2週前から流行地を離れて4週後まで服用。
【治療】:治療薬としては用いられない。
【備考】:南米など三日熱マラリア主流地域では予防の第一選択。アフリカなどで熱帯熱マラリアが多くクロロキン耐性がある地域では、他剤使用のこと(メフロキン推奨)。


■スルファドキシン・ピリメタミン合剤[ファンシダール]
【予防】:予防服用は不可。
【治療】:初日1回2錠、翌日1回1錠を経口投与する。1度に3錠服用するものもある。
【備考】:クロロキンとの併用は禁忌。副作用には、皮膚粘膜眼症候群、中毒性表皮壊死症、再生不良性貧血、全身性エリテマトーデス、食欲不振、嘔吐、中枢神経系興奮、血液障害など重篤なものが多い。


■ドキシサイクリン[ビブラマイシン]
【予防】:毎日1錠。流行地滞在の1~2日前から流行地を離れて4週後まで服用。
【治療】:熱帯熱マラリア治療に単独ではなくキニーネとの併用で使われる。1日100~400mg。
【備考】:副作用の大部分は悪心・嘔吐、食欲不振等、消化管障害、光線過敏症と軽微。食道潰瘍を避けるため多めの水で服用する。カルシウムやマグネシウムと併用すると吸収されなくなるので、サプリメントを避ける。


■メフロキン[メファキン、エスエス、ヒサミツ、ラリアム]
【予防】:予防薬の主流である。週に1錠。流行地滞在の1週前から流行地を離れて4週後まで服用。日本の製剤は最大投与12週間までだが、海外製剤は半年や1年使えるものもある。
【治療】:初回2錠、6~8時間後に2錠(もしくは初回3錠、6~8時間後に2錠)。
【備考】:メフロキンの精神障害の副作用は服用開始後2~3週目にあらわれるので、流行地域入り3週間前からの試験内服で発症を軽減できる。キニーネ、ハロファントリンと併用不可。副作用は精神異常(→飲酒により発現の可能性が高くなるので避ける)、幻覚、平衡感覚異常(→投与後4週間は自動車の運転やジェットコースター等を避ける)、嘔気、下痢、肝障害、腎障害、脱毛など。


 最 後 に 
現在、抗マラリア薬について、“部分的に”知識をもつ旅人は多いかと思います。ネット検索でも、医師との相談においても、部分的知識ならば得ることができるからです。でもそれだと、全体が見えないから、だからまずは、自分が納得するまで調べることにしました。

あまり知識がなかった自分への自戒の意味を込めて、南アフリカ共和国から情報収集をしはじめ、根気良く作成し、そして、コンゴ民主でとりあえずまとめ終わりました。

医療の世界は日進月歩ですから、このページもいつまでも未完成です。だからこれからも、適宜改筆を続けていこうと思います。

末筆になりますが、私の質問に心温まる回答を下さった日本大使館の医務官の先生に、深謝致します。

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14Jul2008