エピローグ 



『私らしい旅をしたい』
旅のたびに、新たなる世界を見たいと、一貫してそう思ってきました。

だって、地球にはいろいろな国があって、いろいろな側面があるんです。

土着的な裸族、悠久の遺跡三昧、極北だって南極だって、
氷河に泊まり、活火山に近づき、中近東砂漠泊、
高度5000mもアラブ社会もビーチリゾートも大都会も・・・
忙しい暮らしの中で、いろいろな地球の側面を、少しずつ見てきました。

ところでGWやお盆の旅は、旅費がとても高くついてしまいます。
それゆえ、旅するごとに、「費用がかかっても行きたい所」はどんどん減ってきて・・・

やがて最後に残ったのが、「社会主義国家を旅する」こと

そう、いよいよこの北朝鮮の旅だったんです。


* * *


20世紀後半は、社会主義国の凋落と消失の歴史でした。

中国の改革開放、旧ソ連の崩壊、東欧諸国の自由主義社会への溶融・・・

今残る主な社会主義国とされる国は、中国、ベトナム、ラオス、北朝鮮、そしてキューバ。
(≫社会主義国 - Wikipediaより引用)

でも北朝鮮以外は、自由化の侵食が大きく、経済自由化と政治体制との反駁があり、
そういった意味で、孤立した社会主義体制を貫く北朝鮮は、
「世界に唯一残る真性社会主義国家」と言えるでしょう。


 * * *


私は、北朝鮮で、少しでも素の人々を見たいと思ってきました。

首都平壌に滞在し、郊外へでかけ、列車で農村地帯を通って国境を越えるルートを組んだのも、
少しでも、そこに住まう人々を見たいと思ったからです。

ガイドや店員とはいえ彼らと会話することは、北朝鮮人の現地の人と話すこと。
一人旅なので会話はすべて北朝鮮人相手になるわけで、
現地の人と話をし、私の質問に答えてもらい、一緒に笑ったり、逆に日本を教えてあげたり、
そういった現地の人とのふれあいができたらやっぱり嬉しいし、
それだってその国の大きな見聞のひとつですよね。
郊外の町や住宅地で、素の人々の笑顔が見られると、またまた嬉しくなってくるんです。

今回の旅は、そんな、小さなことで意外にも心が温かくなる旅でした。






帰国後は、「きれいなところだけを見てきたんだから」、としょっちゅう言われるけれど、
ツアーパンフレットで選ぶ海外旅行だって、その国のきれいな部分だけを見ているのだし、
日本に来る外国人が浅草や京都を見て回ったって、日本のきれいな部分を見ているわけで。

北朝鮮の中に飢える人々がいるのは事実かもしれないけれど、
そういった事象はこの国に限らずとも、わが国であっても見られること。




私が北朝鮮の旅を終えて、北京に着いたあと、
ガイドと、タクシーの中や食事の間に、いろいろなお話をしました。
北朝鮮の体験から冷め止まぬ私は、見たものをどんどん伝えました。

ベテランのガイドである中齢の彼女は、自らが中国の変遷を体験し、
北朝鮮にも古くから何度も渡航しています。

「今の北朝鮮は、30年前の毛沢東の社会主義の中国と似ている。」
「北朝鮮は、やがて中国のようになるような気がする。」


それが彼女の言葉でした。


今の煌びやかな中国は、社会主義政治体制のまま経済自由化に移行した先例です。
そして今まさに、北朝鮮も経済自由化が始まっています。

この数年で、外国の企業進出が盛んになり、
(私が行った開城には、ファミリーマートがオープンしています)
経済自由化とともに、民間人にも裕福層ができ、
平壌では夜遅くまで開いているレストランや商店、自家用車の数が増えてきて、

・・・北朝鮮の未来は、どのような転帰を辿るのでしょう。









改革開放して中国のように? 南北統一で韓国のように?

それとも核国家? 開花、暗澹、傍若無人、それとも・・・。










私は、これからも、関心をもちながら、北朝鮮の変遷を見つめていきたい。
もちろん、国際的諸問題の解決を願いたいし、
私が見てきた北朝鮮人の笑顔が、より多くの人に見られる国になることを願いたい。
北朝鮮の人々が平和で暮らせるよう願いたい。



旅立ち前から帰国後も、北朝鮮関連の本やニュース、コラムなどを、ものすごくたくさん読みました。
北朝鮮に旅していなければ、ここまで関心をもつことはなかったでしょう。

地球最後の社会主義国家の行方を
これからもずーっと見ていきたいと思えるようになったことと、
それに伴って、国際社会全体を見る目が成長したことは、
今回の旅で得たものの、大きなひとつなのは、間違いありません。





朝鮮民主主義"人民"共和国(北朝鮮)の象徴

その手は、"人民"に向け差しのべられているという












* * *


最後に








一人旅は、人生でこれが最後です



“新しい 旅と暮らしへ”

この北朝鮮の旅は、新しい旅と暮らしへの始まりを迎える転換点


nous sommes heureux!
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