私たちのドゴン


「ドゴントレッキング」とは、マリ共和国で世界遺産に登録されているドゴンの集落群を歩いてわたることを指します。

WEB掲示板や情報ノートなどを見ると、必ずといっていいほど話題に上がるのが「ガイド料」や「ガイドとのトラブル」、「ガイドの良し悪し」などです。今回、私たちは、ガイドなしで、自力でドゴンを歩き、結果的にこの上なく楽しく、大満足することができたので、そのレポートをここに記載します。

■ガイドについて
マリでは、特にドゴントレッキング拠点に近いところ(セバレ、バンディアガラ、ドゥエンザなど)では、ガイド志望者がよく声をかけてきます。英語も話せると、(フランス語よりは)日本人も安心するものです。

(1)ガイドつきの利点
・村から村へと道案内をしてくれる。
・たいていが「全含有契約(All inclusive)」となるため、入村料(Village tax)や宿代、食事代をその都度支払わずに済む。
・ガイドが村の説明をしてくれる。

(2)ガイドつきの欠点
・ほとんど一本道なので道案内がなくても歩ける。
・素朴で人が良い小さな村に寄らず、ツーリスト向けの大きな村に寄る傾向がある。
・ガイドが指定した出発時間まで出発できないなど、自分の体力やペースで動けない。
(やる気がなく休憩を長く取りたいガイドに当たると最悪、そういう実例報告多数)
・ドゴンの外に住むガイドだと、ドゴン文化の説明ができなかったりする。

■ガイドをつけない私たちのトレッキング
私たちは、バンディアガラの崖の最南部の上にあるジギボンボの村からトレッキングを開始しました。最初は崖の上からの眺望を楽しみ、崖下りをし、カニコンボレの村から本格的なトレッキングの開始です。

道は基本的に一本道なので、直進すれば良いだけです。ガイドブックのドゴン地図のコピーでも持ち、村の順番を確認できるようにすれば、立ち寄ったドゴンの村で、次のドゴン村への行き方や所要時間を確認できます。
・右=ドロワット、左=ゴーシュ、直進=トゥードロワ
・何kmあるか=セコンビアンドゥキロメトル
・どのくらい時間がかかるか=セコンビアンドゥタン
・次の村=(ア)ルヴィラージュプロシャン
このくらいのフランス語で、大丈夫^^

利点は、ガイドに振り回されないこと。ドゴンの説明は、そのドゴンの地に住む人々と会話すれば良いですし(村には英語話せる人もいますから)、トレッキング中は、1人旅でなければ仲間と互いに会話を楽しみ、ドゴントレッキングそのものを楽しめば良いのです。ガイドがいないほうが村の人との交流が一層持てるでしょうし、「ここ眺めいいねー」っていうところがあれば、そこに座って眺望を楽しみながら休憩したりできます。

■料金の違い
情報ノートにも記されている実例とガイドブックの一般的な相場を参考にして、ドゴントレッキングの一般的な費用を書いておきます。私たちは、4日間(初日と最終日が半日ずつなので、実質3日)歩いたので、その日数で概算を出してみます。
(1)ガイドあり(1人あたり)
1日15000セーファーフラン×4日間=60000セーファーフラン(約15000円)
宿、食事、入村料、拠点の町までの交通費を含む。

(2)ガイドなし(1人あたり)
バンディアガラ→ジギボンボタクシー1人5000セーファーフラン
宿代1000フラン、食事2750フラン、入村料(2箇所)1500フラン、食糧事前買出し1500フラン
合計11750セーファーフラン(約3700円)

2泊テント泊で、かつ最終日にフランス人知人にバッタリ会い車で一緒に移動して交通費が少々浮いてしまったので、それらがなかったらもう少し高額になっています。それでも、(1)の価格よりもずっとずっと安価です。

■ガイドをつけたい方へアドバイス
上記は、ガイドをつけない立場から利点を紹介しました。
しかし、逆の見方をすれば、ガイドをつけてドゴントレッキングをする際、事前交渉内容の参考にもなるはずです。具体的には、「是非小さな村に立ち寄ってほしい」「自分が歩きたいときに歩き、休みたいときに休んでほしい」「入村料を含まない価格を支払い、見て気に入った村だけその場で入村料を払いたい」等のリクエストを出し、交渉内容を自分有利にするのです。それらを快諾してくれるガイドがつけば、自力で歩く以上に有意義なトレッキングも楽しめることと思います。

■訪れた村と一言感想
訪れた順に書きます(北上ルート)。
・カニコンボレ
・テリ…崖にへばりつくような倉庫群が壮観。
・ワリア…小さな小さな素朴で良い村。近郊でテント泊。
・エンデ
・バグル…観光客が来ないような村。おばさんが美味しいドゴン伝統飲料を飲ませてくれた。
・ヤバタリ
・ドゥジュル…観光客が来ないような村。バオバブを使ったごはんを食べさせてくれた。大好き。
・ギミニ…手前から崖を登りベニマトへ行くルートが主流なので観光地化していない。段々と連なる家がかっこいい。
・ノンボリ…あまりにテレム(崖の先住民族)の家が素晴らしく、私たちが唯一村内ガイドをつけたところ。
・イジェリ…小学校があり、訪問したのが丁度放課後で、子供たちが教室で歌を歌ってくれた。
・コマカニ
・ウル
・ティレリ…ドゴン最大の観光村。仮面の踊りを少し見た。
・アマニ…ドコン族の民家に泊めてもらい、ドゴンの伝統食を食べさせてもらった。
・イレリ…この村自体よりも、この村の周辺の崖にある無数のテレムの家が素晴らしい。
・バナニ…知り合いフランス人(自家用車所有)とバッタリ。その後バンディアガラの町まで送ってもらう。

■ドゴントレッキング、小さなアドバイス
・私たちは丸3日で50kmほど歩きました。でも、眺めが良ければすぐ休憩~と、ゆるいペースです。
(普段は1日あるいても数kmなのですが、平坦な地なので意外と疲れずに歩けました)
・午後1~3時は酷暑なので歩きませんでした。小さな村、人の良い村で休息。
・朝は6時から、夕方は18時半(日没)まで歩きました。涼しいほうが歩きやすいのです。
・ただ、秋でも相当暑く、やっぱりここは西アフリカ。水は常に1人1Lは持って歩きたいです。
 (アフリカの井戸水(濁っていたり何かが浮遊していたりする)に抵抗がある人は厳しいかも)
・砂漠のような砂地も歩くので、力が取られることも多くあります。
・「ガイドなしではドゴンが理解できない」という心配無用。村内だけでガイドを雇えます
 (私たちはノンボリで1人500フランにて)
・トゲトゲの植物が多く、足にしょっちゅうトゲトゲがささるので、毛抜きを是非持参。
・荷物を最小限にとどめました(バマコの宿に預けていきました)。
・テント持参は大正解! 村の有無に関わらず夜眠れます。砂丘の上にテントを張った眺めは最高。
・ロンプラには、村ごとに宿の有無が記載されていますが、後者にも宿がありました。
・ドゴン族はシリウス(夜空で最も明るい恒星)信仰に支えられています。是非シリウスを見てね。

■私たちの荷物(2人分)
ドゴントレッキングだけでなく、マリ周遊の荷物です。
・デジカメ、三脚、サンダル、お風呂用品、薬やお化粧ポーチ、虫除けかゆみ止め、着替え2日分、ガイドブック、いつも身につけている貴重品類、帽子、タオルてぬぐい、生理用品、ろうそく、ペットボトル(水を入れる)、テント、ウィンドブレーカー


■参考:ドゴンとは
マリ中央部、バンディアガラの断崖に沿って、断崖にへばりつくように居住する農耕民。ドゴン族がバンディアガラに来る以前、その断崖の遥か高い場所にはかつてはピグミー(小人民族)や狩猟採集民族テレムが移住してきます。14世紀に入るとドゴン族が移り住みます、その生活は相容れず、テレムは滅び、わずかに残ったテレムはブルキナファソ方面へと移動したそうです。

現在ではドゴンの地はマリ観光の主役級で、崖にへばりつくようなドゴン族の集落(電気も水道も供給されない暮らしをしている)や、崖の高いところにあるかつてのテレムの住居跡など、他では見られない景観が見所となっています。

■最後にお願い
WEB掲示板や情報ノートには、「大人にはコーラナッツ(現地で好まれる木の実)を、子供にはアメ玉やお菓子を持って行きましょう。あげると喜ばれます。」等の記述が散見されます。でも、果たしてそれで良いのでしょうか・・・?

観光地化した村を歩くほど、大人や年寄りは「コーラ」「コーラ」と言い、子供は口をそろえて「ドネマビドン」(飲料ボトルをちょうだい)、「ドネマボンボン」(アメちょうだい)の連発。彼らをそのようにしたのは観光客です。果たしてそれで良いのでしょうか・・・?

「アメちょうだい」を言うだけでアメをもらえるようにしてしまうことが、良いこととは思えない。もちろん相手は動物園の動物とは違うのだから、動物園の「エサを与えないで下さい」の看板のようにするべきと言っているのではありません。本当に飢えているのならパンを分けてあげても良いですし、本当に水分不足で歩けないのなら水を分けてあげても良い。でも、観光客を見てワーっと駆け寄ってきて、「ドネマボンボン」を連呼する場合、それとも違う気がするのです。

私たちは、カロリー補給と水のガブ飲みを防ぐために、アメを少々買っていきました。実際ドゴンの子にあげたのは、カイマン(ドゴンの神とされるワニ)を見たいと言う私たちを沼に連れて行ってくれた少女への御礼だけ。そのときは、気持ちを込めて「ガーナ」(ドゴン語のありがとう)って言ってアメしかないいけれども差し上げたいと心から思ったのです。

“働く対価として収入を得る”のが社会の基盤であるのと同様に、人は“何かをしたからこそ得られるものがある”であってほしいと思うのです。私たちが異国の人々にそれを言及する権利もないし、拙いWEBサイトにこんな形で一石を投じてもドゴンを訪れる観光客は変わらないのかもしれないけれどね。

これを読んだ方がやがてドゴンの地を訪れ、そしてこの記述を妥当と思ってくださるなら、ただ現地の人を喜ばすためだけのためにコーラナッツやお菓子を買い込んでいくことを一考してください。その上でどのような結論を持ってくださっても構いません。ただ私たちは、これ以上、素晴らしい地球の財産であるドゴンの地に住まう人々が、これ以上変貌しないことを、心から願うばかりなのです。

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次なるドゴンの旅人が、素晴らしい思い出を残せるようお手伝いできたらと思い、我田引水の側面もあるかとは思いますがこのページをセネガルのダカールで作成しました。あづさ記。
22Nov2007