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サバンナの酷暑

セネガル

 その暑さは突然にやってきた。またたく間に気温は体温を越え、窓から入る風が熱くて気持ち悪い。塩田やバオバブの木、土壁の伝統家屋など、好きな風景が続き、いつもなら楽しい移動のはずが、こう暑くてはどうしようもない。
 アフリカ大陸西端にあるセネガルの首都ダカールで、世界遺産のゴレ島やパリダカールラリーのゴール地点ラック・ローズなどを堪能し、次なる目的地へ車で移動している時ことだ。
 昼食のために小さな村に停まったが食欲はない。木陰に入っても熱風が吹きつけ、苦しいことには変わりない。コップの水を頭にかけ、その瞬間だけ生き返った気分になるが、水道のない村の水は遠くから人が運んでおり、何度もできる行為ではない。何も食べず、ただぐったりと過ごすのみ。
 残り百キロの村で、ビニール袋に入れて凍らせたヨーグルトを買う事ができ、少し元気が出た。目的地で車から降りるとすぐにまた冷凍ヨーグルト。ホテルに着くと今度は生水をがぶ飲み、こうでもしないと熱でやられて倒れそうで、下痢の心配をしている場合ではなかったのだ。
 都市別気温表を見ると、ここから一番近い町の最高気温月平均は訪問の三月で45度、ダカールとの差は10度以上あり、データーのあるアフリカの約二百都市でもっとも暑い場所だ。せめてこれを事前に知っていれば、少なくとも移動時に飲み水をもっとたくさん運んだはず。そうすればここまで暑さでへばりはしなかっただろう。 海に突き出たダカールが快適な気候であり、数百キロの移動ではそう変わらないと思ったのが大間違いであった。


産経新聞連載
「(新)一国一景」
2004年1月22日分

エッセイ