プーノよりラパスへ

 ボリビアのビザをペルーのクスコで取ろうとしたら、国境に近い町プーノで取れと言われ、プーノで取ろうとしたら国境で取れと言われた。国境で取れなかったら嫌だと思ったが、領事館でそのように言われたから仕方ない。それでも不安だった私はバス会社でも聞いて回った。どの会社でもビザについては知らないと言う。ある旅行会社で「直通の切符を買うなら責任を持つ」と言われ、ペルーのプーノからボリビアの首都ラパスへ直通バスで行くことにした。

 バスはチチカカ湖畔の美しい景色の中ひた走る。乗客は63才の日本人のおじさんを除くとアルゼンチン人、ペルー人、ブラジル人の大学生たち、全員がツーリスト。休憩の時、アルゼンチン人からマテ茶を飲ませてもらった。結構うまい。彼女たちはバスの中にポットを持ち込みひっきりなしに飲んでいる。のちにアルゼンチンを訪れ、これがアルゼンチンの普通のスタイルだと知る。誰も彼もがポットを持ち歩き、暇さえあれば飲んでいる。そうとう中毒性のあるお茶のようだ。
 国境の町ユングーヨに着く。ビザの必要な日本人2人、ブラジル人2人だけが、バスでボリビア領事館に連れていかれた。国境で取るのではなく、国境の町の領事館だったのかと納得。パスポートを見せるだけですぐにビザをくれた、無料。思い悩む必要はなかった。チケット売りではなく運転手にビザの質問をしてれば、何の問題もなかったのかもしれない。
 我々の手続きが終る直前に別のツーリストバスが着き、10人くらい我々の後に並んだ。彼らの一人が係官に料金を尋ねる。5$との答え。まだパスポートを見せておらず、国籍も聞かれていない。無料だったと教えようかと思ったが、5$が正しいと金を要求されるとやぶへびなので黙っていた。国境で再びこのグループに会い、日本人がいたので尋ねてみるとやはり全員5$取られたと言っていた。係官のポケットに入ったに違いない。

 ユングーヨからフェリーでチチカカ湖を渡り、ボリビアのコパカバーナの町へ。直行のバスのはずであったのに、旅行会社の人と共にバスを降ろされ、ボリビア側は別のバスだと言われた。ボリビアに入国するがバスが来ていない。旅行会社の人に案内され、100mほど行ったところの旅行代理店に案内される。前にバスが停まっており、このバスだと言われたがしばらくして、ここで昼食休憩だと言うことになった。店の中に荷物を預け、町を一回り、両替できる所がなくボリビアの金がなく食事できない。ほとんどの人々はユングーヨで我々が領事館に行っている間に店で両替。ブラジル人2人はペルーに行く時もボリビアを通ったためボリビアの金は少し持っていた。日本人のおじさんはちょっとくらいかまわないと、他の人がユングーヨで替えたのよりずいぶんと悪いレートで旅行会社で替えた。私のみが金なしの状態になる。
 1時間以上経ってもバスの出発する気配が無い。故障して動かないことが判明した。もめているうちにオンボロバスがやって来た。プーノから来ている旅行会社の人と運転手がもめだした。旅行会社の人が公共バスをチャーターして来たらしいのだが、ラパスまでは行かないと運転手は言っているらしい。客の中からもアルゼンチンのグループが代表で高尚に参加。結果がうやむやのまま出発することになった。
 ボリビア側は未舗装の道、バスもペルー側の新しいバスとは雲泥の差。スピードは出ないが、この辺りの景色はすばらしい。はるか下にチチカカ湖が静かに広がりなんともいえない美しさだ。

 湖の最も狭くなったところでパスポートチェック、ここからフェリーで対岸に渡るはずであったが運転手が拒否。またしばらくもめてたが、バスは戻ってしまった。人だけで対岸に渡る。
 対岸は人家らしきものはなく、売店があるだけ。木の棒が立っておりそれがコレクティーボ(乗合タクシー)乗り場。10人以上の人が列を作っていた。旅行会社の人に列は任せ、我々は座ってしゃべりながら待つ。同じバスの仲間に1$分だけ両替を頼み、果物とコーヒーで腹を落ちつかせた。コレクティーボは全然来ず、時間はどんどん過ぎていく。普通なら怒りだすところだが、相客は陽気な南米の学生ばかり、私も気楽に待つことができた。
 一台目に来たコレクティーボは、トヨタのハイエース。旅行会社の人はチャーターしようと交渉していたが、列の前の人からだと断られた。並んでいた人は全員乗れて、出発してしまった。二台目は中々来ず、他の待ち客も来ないということは今日はもうないのかとさすがに不安になってくる。日の沈んだ頃やっと二台目が来た。フォードのバンで全員乗れるかと心配だったが、なんとか無理に客9人、旅行会社の人を合わせて10人全員が収まった。
 出発は19時過ぎ、白いアンデスの山なみや青いチチカカ湖はすぐに闇に消えてしまった。後は何も見えず、200キロをひたすら走る。
 ラパスの夜景はすばらしいと何人かから聞いており期待していた。あれがラパスだと言われた時見えた夜景は、普通の町の灯りと同じでがっくり。しかしこれは本当のラパスの夜景ではなかった。ラパスはすりばち状の盆地に広がる街。始めの夜景はすりばちの外だったのだ。すりばちの上から中を見下ろす夜景は別世界。急坂を車で降りて行くと宇宙空間を飛んでいるような感覚にとらわれる。
 街に入り、どこで降りるのかと聞かれたが私にはあてがない。学生たちはそれぞれ知り合いの所や夜行バスに乗るためバスターミナルと目的地があった。日本人2人が残り、運転手に中心部にある安宿に着けてくれと頼み、そのままそのホテルに入る。中級ホテルで少々私には高かったが、深夜に他に行く気もせず、もう一人の日本人のおじさんと部屋をシェアーした。ツイン朝食つきで14$、部屋に入ってからガイドブックを調べると推薦してあるホテルで場所も良く、一安心。無事到着。

 所用予定時間8時間の倍以上かかりかなり疲れていた。一時はどうなることかと思ったが、終ってみれば楽しい体験。南米の大学生たちの陽気さに感心、感謝、感動。