初スキーinスイスアルプス

 アルプスの名峰ユングフラウからふもとのインターラーケンへ、氷河の作ったU字谷が続く。この谷底にあるラウターブルネン村からマヤの中腹にあるミューレン村はケーブルカーで結ばれている。傾斜60度の恐ろしいエレベーターのようなケーブルカーだ。昇るにつれてユングフラウ4158m、メンヒ4099m,アイガー3970mが間近に迫ってくるように見えてくる。
 このケーブルカーの中で4人組の日本人に会った。昨日もユングフラウヨッホで会った医者の卵たちである。彼らから、スキーをしようと熱心に誘われた。私は007の映画で有名なシルトホルンまでロープウェイで行く予定であったが、気が変わった。それまでスキーをしようと何度も思ったのにしたことがなかったのだ。雪不足で中止になったり、友人の都合が悪くなったり。スイスで初スキーなんておしゃれではないか。
 ミューレンのスキーショップでスキー3点セットを借りる。4月の下旬で初心者用のゲレンデはほとんどクローズしているが…と、ショップの人が色々アドバイスをしてくれ、開いているゲレンデの確認もしてくれた。
 さらに1本ケーブルカーを乗継いでゲレンデへ。ユングフラウなどが谷を隔ててすぐ間近、景色の良さに圧倒される。ゲレンデには誰も滑っておらず、リフトも止まっており係員が暇そうに客を待っていたのだ。
 滑り方は少し口で説明をしてもらっただけ。いきなりリフトへ、リフトといってもTバー式のもので途中で転んで上までは行けない。その場で直滑降を教えてもらい、滑り降りて、下ではわざとこけて止まる。教えてもらったのはそれだけ。他の人たちは楽しそうにそれぞれ滑っている。3度目でようやく途中で振り落とされずに、リフトの上まで行けたが、それ以降も、何度も途中で落ちた。わざと転んで止まるので体中が痛い。
 他の人が別のリフトに動きたいというので、一緒に動く。ゲレンデにいくつかリフトはあるのだが、係員は一人だけ。我々が移動すると係員も移動するので、5人で行動せざるを得ないのだ。こちらのコースは少し長く角度もきつい。私は直滑降のみでスピードをコントロールできないのだから、非常に恐い。一気に滑り降りるとスピードが出すぎて、止まるとき(すなわち転ぶとき)非常に痛いのだ。一度、土が出ているところで転び全身打撲。さらに最後に一気に滑り降りてみたが、勢いあまって転べず柵に激突。幸いけがはなかった。
 雲一つない快晴で非常に暖かく、他の4人はTシャツに普通のズボン、気軽な春スキーである。私は一応カッパを着ていたが、転ぶたびに雪にまみれ、一人びしょびしょである。暖かいので辛くはないが、恥ずかしい。
 ミューレンで買ったサンドイッチやジュースでピクニックランチの休憩。向かいの山で大きな音が何度も響き渡っている。やがてそれが雪崩であることが分かった。よく見るとあちこちで雪が流れているのだ。
 無謀にも林間コースを滑り降りることになった。ケーブルカーで昇ったU字谷の壁を降りるのだからかなり危険である。ボーゲンを教えてもらって、出発。スピードはコントロールできるようになったが、カーブはまだ曲がれない。左側が崖になっていてずっと緊張のしつづけ、しかし結構楽しかった。ミューレンに降り着いたときもっと滑りたいと思ったほど。
 インターラーケンまで彼らと降り、5人で民宿に泊まった。ユースに行くつもりだったが、疲れており一人遠いところに探しに行く気がしなかったのだ。私には二ヶ月の旅、最後で一番の贅沢となった。

 翌朝、目が開かない。快晴のスキー場にサングラスもせず1日いたので、雪目になってしまったらしい。眼ヤニでまぶたが、がびがび。なんとか洗って、開いたが両目とも真っ赤に充血している。眼の痛みもひどいが、体も少し動くたびに激痛が走る、あちこちにひどい打ち身があるのだ。
 動く気もせずチェックアウトの昼まで一人だけ残り、バスタブに浸かりのんびり。翌日帰国予定だったので、チューリッヒに戻らねばならない。早く戻ったところで17時までユースに入れないので途中観光しようと思ったが、できる状態ではなかった。

 翌日の悲惨さにもかかわらず、私はこれでスキーにはまった。もちろんゲレンデに他のスキーヤーがいない経験なんて2度となく、リフトの順番待ちにいつも泣かされている。