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ビザトラブルその3・ベリーズ

 1992年4月のある早朝、メキシコのカンクンから夜行バスで国境の街チュトマルに着いた。ベリーズ行きのバスが出るのは5時半。バスが出るのを待つ間に、メキシカンペソを使い果たし、心は既に次なる国ベリーズであった。
 定刻にバスは出発、少し走っただけで、国境に到着した。なんの問題もなくメキシコを出国し、ベリーズに入国……、できなかった。国境でビザが発給できるとの情報を信じ、なんの心配もなくビザを取らぬまま来たのであるが、国境ではビザが発給できなかったのだ。情報を信じた自分の甘さを呪ったが、どうしようもない。交渉の結果、8時にボスが来るのでそれまで待てと言われた。待てと言うのなら大丈夫なのだろうと、安心し、時間を潰した。
 8時過ぎ、呼ばれて再交渉をする。しかし、取りつくしまもなく、
「チュトマルの領事館でビザを取って来い。」
拒否の原因は新しくチュトマルに領事館ができたためだったのだ。それまでは首都メキシコシティーの大使館とメリダの領事館しかなく、ここで追い返すとメリダまで引き返さなくてはならなかったのだ。メリダまでは遠く、しかたなく国境でもビザを発給していたそうなのだ。「できたばかりで知るはずないじゃないか」と抗弁したが、本来は事前に取らなくてはならないものなのだから、ダメなものはダメなのであった。

 もうペソはなく、チュトマルに戻るバスは泣きついて無賃乗車。チュトマルでまだ銀行も開いてなかったので、交渉し1$でタクシーに乗り、大使館へ。ビザはその場でくれた。場所が分かったので歩いてバスターミナルへ戻る。買い直したバスの切符は元々ドル。両替もせず、9時半発のバスに乗車することができた。
 ロスしたのは、4時間の時間とたった4$の交通費。どうってことはないのだが、これ以降、ビザに関しては、非常に慎重になった。ガイドブックもうわさも信用しない。取れる場所で早めに取ることを、常に心掛けるようになったのだ。早く取りすぎると、今度は有効期限の問題が出てくるのではあるが…。

エッセイ