アフリカで寒さで悩む
レソト
イメージに反し、アフリカには高原が多いため、涼しく感じる場所も多いのだが、寒いと感じることはさすがに少ない。しかし、南アフリカ共和国に囲まれた小さな山国レソトでは寒さに悩まされた。
訪れたのは南半球の冬である六月、標高千五百㍍を越える首都マセルは寒々とし、回りの山々には雪が積もっていた。
田舎が良いと聞き、二日目には、雪をかぶった標高二千六百㍍の峠を越え、マラカベイ村を訪れた。村で唯一の宿は、夏のトレッキング客目当てに建てられ、暖房設備はない。夜は持っていた服をすべて着て、持参の寝袋に入り、さらに宿の毛布を掛けて眠った。
翌朝は水道が凍って使えず、一部が凍っている川の水を沸かして、洗面をしたほどの寒さ。素朴な山村歩きは楽しかったが、あまりの寒さに耐えられず、翌日には退散した。
数年後、レソトを再訪問。予定がずれ、また六月になった。この時は寝袋がなかったので、山村に行く計画にせず、標高の比較的低い町だけの訪問に絞っていた。しかし、最初に訪れたマプツェの宿では灯油が切れており、また暖房なし。服を全部着て、ありったけの毛布を掛けたが、寒くて眠れず。
翌朝、ここでも水道が凍って水は出ない。宿の人が持って来てくれた熱いお湯がどれだけありがたかったことか。眠れない宿に連泊は出来ず、すぐに首都へ移動した。
本来はトレッキングが人気の国である。二度の訪問でその素晴らしさを実感しており、もう一度訪れたいが、次回は夏、もう寒い宿で凍える夜を過ごすのはこりごりである。
産経新聞連載
「(新)一国一景」
2004年3月25日分