манты(マントゥ) ...キルギス
中央アジア諸国を中心としたトルコ圏(広義のトルコ)には、直径が6、7cmもある大きな蒸しシュウマイがあります。写真のマントゥの中身は玉ねぎとマッシュポテトでした。その他ひき肉を使ったマントゥもあります。
шурпо(シュルポ) ...キルギス
シュルポは、ウズベキスタンのシュルパ(≫
こちら)と同じもので、塩味系のスープ類のことです。一方でキャベツなどを使って「甘み」が引き出されたスープはボルシュ(≫
こちら)といいます。写真のシュルポは肉、トマト、じゃがいも、玉ねぎが入っています。
борш(ボルシュ) ...キルギス
ウクライナやロシア料理として有名なボルシュは、野菜の摂れない北方では寒冷に強いビーツを使ったスープでしたが、それが南方に伝播すると、名前は同じでも中身が違ってきます。ビーツが使えなくなるので、甘みをキャベツなどで出し、トマトで赤くするのです。別途紹介するシュルポ(≫
こちら)は塩気あるスープで、ボルシュは甘味あるスープと、使い分けられているようです。
グシュトゥ、ナン ...キルギス
グシュトゥは肉、ナンは円盤状パンです。キルギスは本来は騎馬民族の遊牧文化圏で、獣肉は基本的な食べ物ですし、小麦粉が入るようになってからは、こうした円盤状パンも普遍的に根付くようになりました。この、円盤パンの上に肉を乗せるスタイルは、お隣中国の新疆ウイグル自治区でもよく見かけます。
борсок(ブルソ) ...キルギス
ブルソはキルギス族(クルグス族)の伝統的な揚げ菓子です。一連の類似文化を形成しているモンゴルにも、同名の揚げ菓子(боорцог、ボルツォ)があります。
баремы(ワレーミャ) ...キルギス
ビシニャというフルーツのシロップ漬けです。これを薄く冷たくした飲料が、コンポートと呼ばれる清涼飲料になります。コンポートはソ連圏の、特に果実がよく採れる南部(つまり今でいう中央アジア諸国)ではよく見られるものです。紙に書いてもらったらスペルに「м」が入っていたので、ワレーミャで良いと思うのですが、耳で聞く音はワレーニャでした。
アフガニスタンのパロウは、イランのポロ/プル(≫
こちら)が発祥で、アフガニスタン、パキスタンを経由して、インドのビリヤニになっていったのではないかといわれています。写真のパロウは他に肉料理があったので肉なしで、トマトと玉ねぎを使い油で旨みを引き出した炊き込みご飯でした。ブリンジは「米」という意味ですが、パロウを指す単語でもあります。
ナンはパン。イランと同じ形のパンがあるのはペルシャ文化の継承です。家庭で焼くパンにはインドやパキスタンと同じ形のものもあります。グーシュトゥはダリ語で肉という意味で、単にグーシュトゥと言えば「肉の煮込み」を指します。アフガニスタン料理はインド・パキスタン料理に比べ調味料が香辛料に傾倒しすぎておらず、このようにトマト煮込みで仕上げられる料理も多くあります。
アフガニスタンではボロニが人気。定義は「具挟み薄焼き」(薄揚げのことも)。写真のボロニはじゃがいも入り、まさにインドのアルパロタと同じです。チャパティーを作る要領で小麦粉を練ったものを薄く延ばし、間にはマッシュポテトが入っています。
イランやアフガニスタンでオシュ/アシュといえば、ヌードル入りスープを指します。ウズベキスタンやタジキスタンでオシュとは、炊き込みごはんを指すので、その違いが興味深いです。ところで、面白かったのが、その食べるスプーンが・・・お玉サイズ(笑) 何箇所かで食べて、全部これだったから、こういう習慣なのでしょう。
インドでコルマといえば、もったりしたカレーでしたが、調味料が香辛料に傾倒していないアフガニスタンでは、コルマは、単に「煮物」です。まあ調味料が香辛料の国だとカレー自体「煮物」なんだけど。写真は料理名をロビオ(豆)とも呼ぶことができる、豆とじゃがいものトマト煮込みです。アフガニスタンではコルマはパラウ(≫
こちら)にかけて、ワンディッシュとしても食べられています。
マントゥは、恐らく中国起源の、中央アジアに広まる大きな蒸しシュウマイです。アフガニスタンが国境を接する6ヵ国のうち半分はソ連構成国なのでこういう食文化の流入が見られているのでしょう。写真は黒くて不気味に見えるかもしれませんが、アフガニスタンに限らずマントゥを黒胡椒で仕上げることは他国でも見られます。チャカー(濃厚ヨーグルト)をかけるのも定番の味付けです。
中央アジアでは各国で実に酷似した発酵乳が作られてきました。アフガニスタン北部は家畜乳を利用する文化があり、タジキスタン南部と同様のヨーグルトが同じ言葉で呼ばれています。
モイー(左)、シールブリンチ(右) ...アフガニスタン
モイーは魚という意味で、写真はツナ缶をほぐしたものを油で炒めた料理です。シールブリンチはロシアやソ連構成国で見られるミルク米粥です。アフガニスタンが国境を接する6ヵ国のうち半分はソ連構成国なので、こういう食文化の流入が見られているのでしょう。
チップスはフライドポテトのこと。街角で軽食を出す店は、ダリ語と英語のミックスで「チップスホナ」(チップスの家)と呼ばれ、それだけ庶民の気軽なお茶請けとしても、フライドポテトは重要なのです。戦争ばかりしていて食文化の発展が著しく阻害されているアフガニスタンでは、みんなこうして、シンプルな揚げイモなどを食べているものです。
ダリ語で野菜全般をサブズィと呼びます(なんだか、インドやパキスタンではサブジ発音が、アフガニスタンではサブズィ発音になっているように思います)。農耕に強い人々だけあり、畑で収穫された野菜を生で食べることもしています。滞在したのは北部アフガニスタンだったので、ディルなどソ連の影響で広まったであろうハーブ類もいただきました。
チョイ(お茶)、おもてなしセット ...アフガニスタン
「客人のもてなし」はアフガニスタン人にとって極めて大事なこと。もてなしの場に欠かせないのがお茶とお茶請けです。お茶は緑茶(チョイサーブス)や紅茶(チョイシオ)。お茶請けはノン(パン)のこともありますが、写真のナホッド(豆)、キシュミシュ(干しブドウ)、ボドン(桃仁、アーモンドっぽい)、チョクリト(キャンディー)も。チョクリトって名前がチョコレートみたいですよね。
スイカ。夏の時期の、身が真っ赤に染まったスイカは実に美味しい。でもアフガニスタンでは、「お茶とスイカの食べ合わせは危険」とされているようで、要注意。
курутов(クルトップ、クルトーブ) ...タジキスタン
タジキスタンの筆頭国民食、クルトップは「バターを取ったあとの牛乳を発酵させてパーイ(ヨーグルト、≫
こちら)にし、水切りして団子にして乾燥させた物」、つまり牛乳の保存食です。用時お湯に溶かして(戻してもパーイとは呼ばずクルトップと呼ぶ)、シュルチョイ(≫
こちら)と同様、バターを溶かしてちぎったノン(パン)を浸していただきます。野菜を乗せたご馳走クルトップもあります。
ширчой(シュルチョイ、シルチョイ) ...タジキスタン
シュルチョイの定義は「茶+ミルク+水(お湯)+塩」、つまり、中央アジアの遊牧文化に広がるミルクティーです。ここにバターを落としいれ、溶けて表面に浮かんだら、ちぎったノン(パン)を浸していただきます。
пой(パーイ)またはчургот(チュルゴット) ...タジキスタン
中央アジアでは各国で実に酷似した発酵乳が作られています。これはバター分を取り除いた後の獣乳を温め、種菌を入れて放置発酵させたもの。パーイはパミール語、チュルゴットはタジク語です。日本語ではヨーグルトですね。
кулча(クルチャ)、шурпо(シュルポ) ...タジキスタン
クルチャは小さな円盤状のパン(大小に関わらずリピョーシカとかノンと言ってしまう人もいます)。シュルポは、あまり甘みの出る野菜を使わず、肉や野菜でしょっぱめに作った澄んだスープ。このシュルポはタジキスタン料理の中では最も大事なものの1つではないでしょうか。どこに行ってもシュルポはあるし、逆に田舎の食堂ではノン(パン)とシュルポしかないところも多いから。
соус(ソウス) ...タジキスタン
この料理面白いなー! シュルポ(≫
こちら)と比較すると、類似と相違点が面白い。肉やじゃがいもや野菜と同じ材料を使っても、シュルポは水を多くスープとして仕立てるのに対し、ソウスは肉とじゃがいも主体で汁気少なく仕上げる・・・そうなんです、タジキスタンのソウスは日本で言うまさに「肉じゃが」だったんです。写真は鶏肉の肉じゃがですが、牛肉でもよく作られるそうです。
ош(オシュ)またはплов(プロフ、プロウ) ...タジキスタン
中国新疆(≫
こちら)、カザフスタン(≫
こちら)、ウズベキスタン(≫
こちら)と一連して共通する、基本的には肉とにんじんの油炊き込みご飯です。ウズベキスタンとカザフスタンでは「手づかみ」という意味の「オシュ」とも呼ばれていることを確認しました。市場で食べると油たっぷりすぎでびびりますが、家庭のオシュは油少なめでほっとしました。
манту(マントゥ) ...タジキスタン
中央アジア諸国には、直径が6、7cmもある大きな蒸しシュウマイがあります。中身は牛肉や羊肉のミンチと玉ねぎで作った餡。カティック(調度が硬くて酸味あるクリーム)をかけていただくのが定番です。写真奥に見えるスパイシートマトジュース(キマエ、キマヤ、ズベラボイ等呼ばれていた)を更にかけるのも好まれています。
лагман(ラグマン、ラグモン) ...タジキスタン
中国の「ラーメン」の名が転じて、ラグマンまたはラグモンになりました。他の中央アジア諸国同様、タジキスタンでもよく見られる料理です。肉や野菜のトマト味のスープ仕立てで、仕上げにカティック(サワークリーム)がかけられていました。
борш(ボルシュ) ...タジキスタン
ウクライナやロシア料理として有名なボルシュは、野菜の摂れない北方では寒冷に強いビーツを使ったスープでしたが、それが南方に伝播すると、名前は同じでも中身が違ってきます。ビーツが使えなくなるので、甘みをキャベツなどで出し、トマトで赤くするのです。別途紹介するシュルポ(≫
こちら)は塩気あるスープで、ボルシュは甘味あるスープと、使い分けられているようです。
шашлыки(シャシュリーク)、пиво(ピーボ) ...タジキスタン
もともとコーカサスはグルジア発祥とされる、肉類の串焼きです。高原地帯で遊牧民の多いタジキスタンでは、乳製品が取れる牛や羊を飼育するので、豚肉をあまり使用する習慣がなく、主なシャシュリークは牛肉、そして飼育の簡単な鶏肉となります。意外に羊肉は少ないようでした。こういう串焼きはビールと一緒にいただくのが美味しいですよね。
суп-пити(スプピティ) ...タジキスタン
ピティはアゼルバイジャンの壷入り肉豆野菜スープで、イランのアーブグシュトゥ(≫
こちら)と同じ物です。アゼルバイジャンがソ連の一員だったゆえにロシア料理としても定着し、同じくソ連だったタジキスタンにも定着したのだと思います。羊肉や牛肉などがよく使われるのは、それらが乳製品を得るのにも絶好の家畜だから。супは英語のsoup(スープ)と同じ言葉です。
Чахохбили(チャハンビリ、チャホフビリ) ...タジキスタン
もともとコーカサスはグルジアの家禽料理。でもソ連圏では鶏肉を使うように伝播したところも多いみたいです。チキンを少し吊って乾かし、にんにくやトマト煮にしたものです。写真は仕上げにスライスオニオンとディルの葉。
Голубцы(ガルプツィ) ...タジキスタン
「包み物」を意味するガルプツィは、肉や米をキャベツで包んだり、ピーマンに詰め込んだりする料理です。特に東欧、コーカサスなどソ連圏とその周辺に広まっていて、タジキスタンにもその影響が浸透しています。タジキスタンらしいのは野菜入りトマトスープに入っていること。ウズベキスタンやタジキスタンでは、麺も米も、こうした特別な具も、たいていこういうスープ仕立てになりますね。
голова(ガローワ) ...タジキスタン
ガローワはロシア語で「頭」という意味。毛を炙り焼いた仔牛か山羊の頭を塩煮にしたものです。頭蓋骨の外の部分は皮下のゼラチン質が美味しいし、目玉そして、1つ1つ知恵の輪のように骨を外してゆくと延髄部分から到達する脳みそが、やはり珍味です。
нон(ノン)、чой(チョイ) ...タジキスタン
タジキスタンの食の基本は、円盤状パン(ロシア語でリピョーシカとも呼ばれ、クルチャと呼ぶパン(≫
こちら)もノンに含む)。そして飲み物はチョイ(お茶)。お茶は緑茶(タジク語及びパミール語でカブーチョイ)や紅茶(タジク語でチョイフォーミル、パミール語でタールチョイ)です。基本は無糖で提供され、客が好みで砂糖を加えて飲みます。
タジキスタンは山地だらけで、今も遊牧民が生活し、ヤギや羊が放牧されています。ここパミール地方の羊乳酒は、キルギスやカザフスタンで飲んだ馬乳酒よりも美味しいと思いました。このドゥズがヤギ乳ではなく、羊乳を原料としたものであることは確認できました。
плов(プロウまたはプロフ)またはош(オシュ) ...ウズベキスタン
ウズベキスタンを代表する米料理です。ピラフの一種で、鍋に大量の油と大量の人参と塊肉を入れて炒め、層になるように米を重ねて炊くスタイルは、中国新疆やカザフスタンのものと酷似しています。お皿に盛るときに、ごはんとにんじんを混ぜ、肉をカットして乗せ、付け合わせの野菜(刻みきゅうりや刻みねぎなど)を添えていただきます。オシュは手づかみで食べるものという意味。
шурва(シュルバ) ...ウズベキスタン
シュルバはショルバと同じ語源と思われ、スープ類全般を指しうる名称です。ただし中央アジアでは、甘いスープはボルシュ(ロシアやウクライナのボルシチのこと、≫
こちら、ビーツじゃなくてキャベツなどで甘みを出してもいい)とされることがあり、シュルバは「しょっぱいスープ」を指すようです。写真は塩味系統の野菜スープでした。
закас сомса(ザカスサモサ)またはбyюртма сомса(ブユルトゥムソムサ) ...ウズベキスタン
サモサとは、肉や玉ねぎソテーなどの具を小麦粉の皮で包んで揚げたり焼いたりする料理。ウズベキスタンでは1つ100円もする高額サモサが人気です。ロシア語の「ザカスサモサ」は日本人向けに訳すと「グッドなサモサ」、ウズベク語で「ブユルトゥマソムサ」。驚きビッグサイズ!!肉たっぷりすぎ!! アチェックというスパイシートマトジュースをかけて幸せいっぱい召し上がれ!
мастава(マスタワ) ...ウズベキスタン
マスタワはちょっとお腹にたまるスープ料理。ウズベキスタン料理は細かく切った野菜の入ったトマト味スープで仕立てるものが多いです。マスタワには米や豆や野菜やハーブがいろいろと入っていて、良い旨みがあります。写真には写っていないのですが、カティックという濃厚で硬い調度のヨーグルトのようなものを乗せていただきます。
лагмон(ラグモン、ラグマン) ...ウズベキスタン
中国の「ラーメン」の名が転じて、ラグモンまたはラグマンになりました。すなわち小麦麺を使った汁料理です。ウズベキスタン料理は細かく切った野菜の入ったトマト味スープで仕立てるものが多い。牛肉入りで汁は美味しいのですが、肝心の麺は、やはり中国国内の麺料理には劣るなーと思いました。
шашлик(シャシュリーク)、ウクスース ...ウズベキスタン
シャシュリークはコーカサス(グルジアなど、≫
こちら)の発祥起源説がある肉の串焼き料理で、ソ連圏広域に広まっています。ウズベキスタンのシャシュリークは、スライス玉ねぎとウクスース(ハーブやにんにく漬け込み酢、写真右)が定番のお供。ウクスースをかけた玉ねぎはたちまち辛味が消えて実に良い付け合わせになるのです。ウズベキスタンでは牛肉がよく使われているようです。
©2007-11 Azusa