чанасан мах(チャナサンマハ、チャンスンマハ) ...モンゴル
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直訳「ゆで肉」。これは最も基本的な肉料理。作り方は、湯を沸かして沸騰したところに骨付き肉(必ず骨つき)を入れて1時間煮るだけです。ゆで汁は適宜塩を足して「ヤスニシュル(骨スープ)」、または「マハチャンスンシュル(肉ゆで汁)」と呼ばれるスープにします。夏は家畜を育て、家畜を殺して肉を得るのは冬。こういう肉は冬に食べるのがモンゴル遊牧民の文化です。
ааруул(アーロール、左奥)、цөцгий(ツッツギー、右手前) ...モンゴル
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夏は家畜を育て、家畜を殺して肉を得るのは冬。夏には家畜の赤ちゃんが生まれるのでたっぷりのミルクが得られます。夏に豊富に食べられる乳製品は「白い食べ物(ツァガーンイデー)」と呼ばれます。アーロールは発酵脱脂乳を漉したもの(砂糖入りだと甘酸っぱい)、ツッツギーは上層脂肪を取ったあとのクリーム状乳。そのほか多数の乳製品がモンゴルにあります。
хуушуур(ホーショール) ...モンゴル
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きっと今やどのモンゴル家庭でもホーショールを作っているのではないかしら。直径10~15cmもある円形または半円形で扁平の揚げ餃子です。中には羊肉ミンチ(家庭により野菜みじん切りも)が入っています。夏の祭り「ナーダム」の時期のお祝い料理。でも年中あちこちで食べられるモンゴル国民食の筆頭。
бууз(ボーズ) ...モンゴル
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モンゴル版の「シュウマイ」です。日本の餃子と同じ形ならモンゴル版「餃子」でもいいけれど、写真のような円形が普通なので私はシュウマイとします。シュウマイは現在の中国内モンゴル自治区の発祥料理。そしてモンゴルでは旧正月料理かつ通年の国民食。中身は大抵羊肉ミンチです。なお「у」はロシア語ではウーでもモンゴル語ではオーですので、ボーズと読んで下さい。
гурилтай шөл(ゴリルテイシュル、ゴリルタエシュル) ...モンゴル
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素材としてのゴリル=小麦粉で、料理になるとゴリル=麺。シュル=汁なので、この料理は「汁そば」。伝統的なスタイルだと、写真のように、羊肉しか具がありません。麺の打ち粉で白いとろみがついていて体が温まります。本来農耕をしなかったモンゴルでも近年野菜を食べるようになってきており、キャベツや玉ねぎ、にんじんなどが入ったゴリルテイシュルもよく見かけました。
бантан(バンタン) ...モンゴル
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こういう料理はモンゴル料理の典型だなとつくづく思います。土を傷つけるのを嫌う遊牧民は野菜を持たない、かろうじて中国から小麦粉が入るようになって、家畜の肉(主に羊肉)と小麦粉でどろっとした汁を作って、体を温めていたのだと思います。別途紹介するゴリルテイシュル(≫
こちら)のように麺をうたなくて良いので、簡単で実用的。
банштай цай(バンシュテイツァイ、バンシュタエツァイ、左)、банштай шөл(バンシュティシュル、バンシュタエシュル右) ...モンゴル
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банш(バンシュ)は餃子、羊肉ミンチや玉ねぎのみじん切りを餡にして小麦粉の皮で包んだもの。左はバンシュをミルクティー(ツァイ=茶)に入れた驚きの料理で、更に香ばしさを出すために最初に米を炒っています。右はバンシュ入りスープ料理(シュル=汁)で、トマト仕立ての野菜スープに餃子が入っています。
шарсан банш(シャルサンバンシュ) ...モンゴル
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банш(バンシュ)は餃子、シャルサンは鍋に少し油を入れて揚げることを意味します。揚げ餃子そのまんまの料理です。中身は羊肉ミンチや玉ねぎのみじん切りが入っています。同じく「揚げ餃子」と称されるホーショール(≫
こちら)は直径10cm以上ある扁平揚げ餃子ですが、バンシュは長い径でも4、5cmと小さめです。
хавиргатай шөл(ハウラカタエシュル) ...モンゴル
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ハウラカタエ=スペアリブ、シュル=スープ。肉つきあばら骨スープです。「モンゴル料理は羊肉料理」のイメージにぴったりの料理ですね。もともと農耕(土を傷つけること)を嫌う遊牧民族主体のモンゴル人でしたが、定住化する人も増え、人口も増え、近年では野菜の栽培と輸入量の増加により、モンゴル人も野菜を料理に使うようになってきています。
цутгасан гэдэс(ツォトゥガサンゲデス) ...モンゴル
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主に羊肉を食べるモンゴル人の、内臓まで大事に食べる料理の代表。日本人が腸詰め=ソーセージ、と言われて抱くイメージとは違うダイナミックな腸詰めが登場しました。大腸に脂身と赤身が詰まっていて、直径は5cmにも達するものでした。モツ好きなので、こういう料理は大好きです。
каз(カズ)またはадууны мах(アドゥニマハ) ...モンゴル
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モンゴル西部の山地にはカザフ族が住み、馬肉を常食しています。今やカザフスタンに住むカザフ族は伝統文化を失い、カザフ族の伝統文化を最も残すのはモンゴルのカザフ族と言われています。そのような文化の継承に敬意を込めて、モンゴルでカザフ族が調理した馬肉燻製料理「カズ」をいただいてきました。なおモンゴル語で「馬肉」は「адууны мах」(アドゥニマハ)と言います。
лыванз(リュワンツ、左)、хуйцай(ホイツァエ、右) ...モンゴル
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お隣中国から調味料が流入する影響か、醤油の味がきちんと利いた料理2種。羊肉やミンチ肉団子、野菜などを醤油炒めにしたのがリュワンツで、醤油スープ煮にしたものがホイツァエ。真っ白な羊の脂身の切り身がドンとトッピングされます。ホイツァエはхуйцаа(ホイツァー)とも。
гуляш(ゴリヤシュ) ...モンゴル
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モンゴルはかつてソ連の衛星国でした(※ソ連ではない)。ソ連構成国(中央アジアの国々など)と共通する料理が見られるのもモンゴル料理の特徴の1つだと思います。ゴリヤシュは単に「肉」という意味で、カット肉の炒め煮です。ハンガリーのグラーシュ(≫
こちら)やイランのグシュトゥ(≫
こちら)にも広がる、一連の「カット肉料理」の一端がモンゴルにあります。
тефтель(テフテリ) ...モンゴル
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モンゴルはかつてソ連の衛星国でした(※ソ連ではない)。ソ連構成国(中央アジアの国々など)と共通する料理が見られるのもモンゴル料理の特徴の1つだと思います。テフテリは米の入った大きめ肉団子。ごはんが中に入ることで、ふっくらと柔らかい肉団子になっています。
халгай(ハルガイ、左)、гүзээлзгэнийн навч(グゼールゼゲニンナブチ、右) ...モンゴル
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モンゴル遊牧民は土を傷つけない。家を建てるときも柱を土に刺さず、畑を耕すことも絶対しなかった。だから本来モンゴル料理には野菜がありません。しかし、草原に夏の風が息吹く頃、野の草を摘み、乾燥させ、一年中使います。ハルガイはイラクサ、グゼールゼゲニンナブチは野イチゴ(グゼールゼゲネ)の葉(ナブチ)。大事な調味料です。
боов(ボーブ、左)、цай(ツァイまたはツァエ、手前) ...モンゴル
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ボーブはビスケット、祭りや客のもてなしに使われます。ツァイはグルジア緑茶。かつてロシアは中国から茶を輸入していましたが、1870年グルジアで茶栽培が始まり、1966年に中ソ関係が悪化すると中国はソ連への輸出を停止し、ソ連ではグルジア茶が飲まれました。中ソの中間にあるモンゴルはソ連の社会主義人員となった背景から中国茶ではなくグルジア茶が定着しています。
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