エマダツィ ...ブータン
今やブータン料理の筆頭格「エマダツィ」。エマ(唐辛子)をダツィ(チーズ)で煮絡めた料理です。左の赤く大振りのブータン産唐辛子は香り豊かで辛味マイルドですが、右の緑のインド輸入唐辛子を使うと辛い。本来エマダツィはブータンになかった料理ですが、ここ40年でインドとの道がつながったために、チーズの普及も含めて食文化が大変遷したことを語る料理でもあります。
唐辛子をたっぷり使った「薬味」的な存在をエゼと言います。薬味なのでそのスタイルは十人十色。例えば左のエゼは唐辛子をトマトやネギや花椒と共に油煮にして熱い辛さとヒリヒリした辛さを引き出したもの。右のエゼは2種類の唐辛子を刻んで白チーズや塩と和えてすっきり強辛に仕上げたものです。ともあれブータン料理にはエゼがないと寂しいですね。
ケワダツィ ...ブータン
ケワ(じゃがいも)をダツィ(チーズ)で煮絡めた料理です。唐辛子もしばしば入りますが、ケワダツィはそんなに辛・辛・辛にしないものなのだそうです。チーズとじゃがいもだけでは出ない旨みを玉ねぎやにんにく、時に唐辛子が与えてくれ、大変に美味なる料理です。ごはんにケワダツィ、パンにケワダツィ。どっちも美味しい!
シャモダツィ ...ブータン
シャモ(きのこ)をダツィ(チーズ)で煮絡めた料理です。写真のシャモダツィは、玉ねぎ、唐辛子、トマトが入った豪華版! ブータン料理には○○ダツィ(○○のチーズ絡め煮)が多くて、しかもそれら全てが美味しくて、いろいろと楽しめます。
ヤクシャ、レッドライス、ダル ...ブータン
ブータンには高地にのみ生息する「ヤク」という黒い牛のような動物がいます。ヤクシャ(シャ=肉、つまりヤクの肉)は美味で乾燥肉(ヤクシャカム)として保存され、調理時には圧力鍋で大根や唐辛子と合わせて炊かれます。こういうヒマラヤの民の料理こそ、ブータンに行ったら味わってきてほしい。写真はブータン料理にはよくある赤米とダル(ひき割り豆ポタージュ)のセットです。
パクシャスィッカム ...ブータン
パクシャは豚の脂身のこと(豚肉自体もパクシャと言う)。スィッカムはその肉を乾燥させたもののこと。写真はパクシャスィッカムを水、大根、トマト、にんにく、唐辛子粉と共に圧力鍋で炊いた辛くて美味しい煮込みです。脂っこいのでごはんが進みます。特に田舎は好まれる料理とのこと。ちなみにブータンの主要エリアは標高が高く(例:首都で2500m)、台所には圧力鍋必須。
ノシャパー ...ブータン
ノシャ=牛肉、パー=長めに(でも大きくなく)スライスしたもの。写真は圧力鍋で戻した乾燥牛肉の短冊切りとブータン産唐辛子(細身ピーマンかと思うくらいに大きい)を炒め合わせた料理です。ブータン産唐辛子はインド輸入唐辛子(細い緑色)のような強い辛さがないので、こういう料理に使っても辛味はマイルドです。
シャは何かの肉の意味で、ニャシャは魚肉を表します。ブータンはヒマラヤから注ぐ河川が豊富ゆえ魚がよく獲れますので、魚料理も是非モノです。写真は魚を大振りの切り身にして素揚げにし、唐辛子粉、トマト、玉ねぎで炒め合わせました。シンプルですがすっごく美味しい! なお水分を飛ばすように調理してあるのでツェムとは呼びません。
カックルまたはカックルツェム ...ブータン
写真はカボチャを乾燥骨付き牛肉、油、塩、にんにく、唐辛子粉で圧力鍋調理したカレー。「ツェム」は英語ではカレーと呼ばれても、コリアンダーやクミンで香りをつけるお隣インドとはまったく違う、「唐辛子と水分の多い煮込み」です。またト(ごはん)とツェムを混ぜた料理は「ト・ツェム」・・・が転じて「トツィ」と呼ばれ、ブータン全土で朝食として食べられています。
バトゥーまたはトゥッパ ...ブータン
チベットに由来するがため、ブータンに古くから存在する伝統料理です。ヌードル全体を「トゥッパ」とされ、「バトゥー」と呼ばれるものであるためには小麦粉を練ってうつ手延べ麺でなければなりません。写真は乾燥牛肉をゆでて戻して具にしたビーフバトゥーです。汁は肉ゆで汁と塩ベースでさっぱり美味しい。辛いのを好む人は奥に見える唐辛子粉や山椒粉で調節。
チベットに由来するがため、ブータンに古くから存在する伝統料理です。作り方は餃子と大体同じ。肉類をたたいて玉ねぎやチーズなどと合わせてタネを作り、小麦粉の皮を練って伸ばしたもので包み、蒸します。ネパールのモモ(ネパリモモ)と違う点は、ネパリ版がアツァールというつけダレで食べるのに対し、ブータン版はエゼ(唐辛子ミックスの薬味、≫
こちら)で食べること。
ブータン版の腸詰めです。特にくびれは作られていませんでした。レバーも混ぜ込んだような濃厚な味がして、山椒の粉などでヒリヒリした香味がつけられています。ゆでたり焼いたりしていただきましたが、これはこれで、なかなかごはんもお酒も進みそうなお味でした。
ブータン料理には生で食べるものもあります。写真は大根をスライスしてエゼ(唐辛子ミックス、≫
こちら)と塩とで混ぜ合てさっぱりとした辛さのサラダ仕立てにしたものです。ブータン人にホゲについて尋ねたところ、「not so spicy, not so hot」、つまり「そんなに辛くはないもの」と言っていただけました。きゅうりやカブを使ったホゲも可。
ヤクという、4000mといった山岳地帯にしか住めない動物がいます。そんなところでは逆に他の作物が採れないのでヤクの肉なりミルクなりが貴重な食糧源です。今ではヤクのミルクから得たチーズをカチカチに乾燥させたものが出回っています。甘みからミルクキャンディーを思い浮かべる味でした。なめ終わるのに1時間はかかります。
シップ、ガジャまたはンガジャ ...ブータン
ブータンの家庭のおもてなしの定番は、シップ(平たく押し延ばして乾燥させた米)とガジャ(ミルクティー)。
チベットに由来するがため、ブータンに古くから存在する伝統飲料です。日本語ではバター茶と呼ばれます。黒茶(強度発酵して固形になった中国茶)を削り、塩、バター(ヤクなどの乳から得る脂肪分)と共に淹れたお茶。バターがとかく獣臭いのでしょう、このお茶も強い肉汁の風味がします。でもそれが塩や油分と合っていて、意外に美味しいと思います。
©2007-11 Azusa